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遊びの手法     カプラ活動の基本(2012年2月19日)□カプラで遊ぼう  □カプラはたのし □カプラクラブ
   □かぷらのかまくら&ビッグバン  □ふゆっこまつりとカプラ □南っ子とカプラ
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 カプラの活動の基本を整理してみたいと考えて作ってみました。

 カプラはフランス生まれのブロックですが、日本の文化と似ていることがたくさんあります。
 カプラで遊ぶ時は裸足で正座でフランスでも遊ぶそうです。カプラは小さくて平たいので、靴で踏んづけてしまいがちです。すると汚くなるので、素足だと踏みつけることがないからのようです。
 私はカプラのワークショップで基本的な考え方として、「靴を履かないで素足で遊ぶ」ことを基本にしています。
 カプラは概ね横12センチ・横2.4センチ・厚さ0・8センチ(15:3:1)の小さな木のブロックです。けれどささくれだったり、反ったり曲がったりの変形がしないのが特徴のフランスカイガンショウという松の仲間の木で作られています。ささくれない変形しないとの特性から、木片の角を落とす必要がありません。そこで、精密な遊びが出来ます。このことは同時に投げたりすると危険性が出てきます。ですから、カプラを投げることは禁止です。

 カプラ (kapla) はオランダ人 Tom van der Bruggen によって考案された、積み木の一種である。(ママ)カプラという名前はオランダ語の "kabouter plankjes" (小さな板) に由来する。
カプラはフランスランド県の松の木から非常に正確な寸法で削られてできている。その厚さ、幅、長さ (117,4 mm) の比は1:3:15であり、この寸法はすべてのカプラシリーズで同じである。組み立てにはどのような他の部品も必要がなく、ただ木片の上に他の木片を積み上げて行くだけで複雑な構築物まで作ることができる。
 「きちんとした設計図などによって作る人の想像力を妨げたくない」という考案者の意向により、レゴなどの他の組み立て玩具のように組み立て見本を集めた本はない。
 競技会も開かれており、大人のグループが保持する最も高い塔の記録は15,57mである。これは5123個のカプラを10時間以上かけて作られたものである。


 
 ゴミや鼻くそなどが付くと精密さが失われますので、裸足で遊ぶことが基本であるとともに、手をきれいにして、清潔に遊ぶことも必要となります。これを私はカプラにカプラに鼻くそをつけないと言っています。
 準備や後片付けはきちんとしっかりやる。これは人のために動く=働く論理だと言っています。口を閉じて、しっかり後片付けをするのは当然のことです。カプラの活動は「働き」「学び」「遊び」のバランスが大切です。
 上記の基本をしっかりと守れば、後はその範囲の中で自由に遊ぶことになります。ルールを守って、みんなが仲良く遊べることが本当の自由でこの場合の自由はフリーの自由ではなくてリベラルの自由であると思います。
 こんなことをカプラの活動の基本としながら、次にカプラの使い方の基本をいくつか紹介したいと思います。

 カプラはきれいに並べて入れると200ピースの箱に半分以下になります。きちんとそろえなくても同じ方向に入れれば5分の3位に入れることが出来ます。取り出すことを考えても、同じ方向に片付けておくことが基本です。最初にきちんと片付ける躾をしておくと、他の遊具もきちんと片付けるようになりますので二重にお得です。


 横にきちんと並べて入れる場合は10枚で一列になります。200枚は20段になりますから、200枚は高さ16センチとなります。カプラの箱は35センチ位ありますから、きちんと入れると半分以下で収まり、同じ方向に入れれば20センチ位になりますね。

 私はカプラのワークショップに出かけるとき、200ピースの箱に300ヶ入れて運んでいます。ちょうど30センチ位の高さになるので、白い部分の線まで入れています。

 カプラの使い方は3種類です。一番安定しているのが、寝るです。寝るだけでもいろいろな遊び方があります。寝るを高く積む。寝るを蛇のようにつなげていくなどです。



 起きるは横に起きた状態です。起きるは寝るより不安定ですが、簡単に倒れることはありません。起きるを重ねて丸い輪などを作ることができます。

 最後はカプラが立つです。カプラを立てるのではなくて、カプラが立つというのが基本です。親指と人差し指でカプラの上の部分を持ち、カプラを立てる場所に持って行きます。そしてそっとその場所に置き、カプラが自分で立つのを俟ちます。カプラが立ったら、指を離すのが基本です。


 カプラが寝るを階段状に少しずつずらして並べるとカプラのらせん階段になります。保育園児でも20枚くらいは重ねることができます。小学生なら、30枚・40枚を重ねることが出来ます。50段を超えると大人でも難しくなります。カプラはユニバーサルデザイン的な遊びです。らせん階段は誰にでも作ることが出来ますが、高く積むのはどんどん難しくなります。ですから、大人も楽しく遊びことができます。

 起きるを井形に組み合わせるとどんどん高く積むことができます。井形だけでどれだけ高く積むかを競争するのも一つのやり方です。最初にきちんtの積まないと途中で壊れることがあるものです。
 カプラは壊れると「カラカラカラ」と素敵な音がします。せっかく作っていたのに他人の振動で壊れて、顔がしかめっ面になりそうになる直前に「いい音がしたね。」と声かけをすることはとても大切なことです。

 起きるの井形積みよりも起きるの三角積みの方が難しいようです。保育園の年中さんにはちょっと困難な時もあります。でもヴィゴツキーの最近接領域との概念があります。子どもにはその子どもの持っている能力のちょっと上の能力が必要なものを提供することが必要です。ワーカーはいつも現在の子どもではなくて、明日の子どもを見つけてあげることが必要です。しかしあたかも子ども自身が見つけたかのように思わせることが大切なのです。

 具体的にはワーカーが上図のように積んでいくと、子どもはもう一本の起きるをどこにおいたら良いかを自然と発見していくものです。その発見を大切にすることが必要です。この働きかけはワーカーでなくて、友達同士での発見や教え合いのほうが効果があります。ですから、ケースワークは出来るだけ、グループワークの中で実施して、子ども同士の気づき合いを大切にすることが必要です。児童館や児童クラブにおけるケースワークは意図的にグループワーク的であることが大切と思います。

 三角積みの次の段階は、ワーカーが1枚の起きるを置くだけで後の2枚の起きるをどこに置くかを発見することにあります。そして、最終段階で一つ飛ばして同じように三角に積んでいくことを子ども自身が発見することが大切です。子どもが積み方を発見したら、ワーカーはいつまでもケースワークをしないで、その子どもから離れ、全体のグループワークやコミュニティワークの活動をすることが大切です。ケースワークとは子どもの自立ト自律を促すことです。

 これを繰り返していくとどんどん高くなります。すると当然崩れる確率が高くなります。自分自身の失敗や他人の振動などが原因となります。崩れると子どもは嫌な気持ちになり、失敗した自分を責めたり、振動を起こした他人をこうげきしたりrするものです。この時にネガティブな子どもの気持ちを受容しないで、ポジティブな方向にもっていくことが大切です。それが崩れた瞬間に「いい音がしたね」との声かけをすることなのです。この時にいい音をさせた主体の自分に自尊心を持つことになるのです。

 井形積み・三角積みや多角形の起きるの積み方はいろいろあります。中に子どもが入って、みんなでどんどん積んでいくこともあるでしょう。このような積み方をしていると当然、途中で崩れてしまいます・でも「いい音がしたね」とのワーカーの声かけがあり、自尊心を持ち続けることが出来ると、子どものチャレンジ精神が触発されて、一生懸命遊んだり、工夫したりするものです。

 カプラは最初からたくさんの数を与えるのではなくて、10枚くらいからやるのがよいと思います。10枚との制限の中で、工夫が生まれるのです。理論的に計算してみると、寝る・起きる・立つの3次元的な組み合わせで億通りではなくて、億の次の兆の次の京の次の垓(10の20乗)通りあるようです。ですから、10枚でも子どもは同じ作品になることがありません。

 200枚で楽しく遊べるのがカプラのジェンガです。多角形であれば4角形でも、6角形でも良いのですが、一般的な6角形で作ってみます。6枚のカプラを寝せて、正6角形になるように置きます。


 その上にまた寝るを6枚重ねます。


 同様に寝るを3枚重ねます。

 3枚目の寝るの上に2枚内側にハの字に立つを置きます。

 立つの上にまた寝るを置きます。また寝るを置き、その上に寝るをまた置きます。3枚の寝るの上に立つ1枚のセットでだんだんと高くしていきます。

 7段くらいになったら(写真は2だんですが)上の部分を寝るだけでだんだん狭くしていきます最終的には4枚まで小さくする。

 最後の4枚は上のようにクロスをさせる。

 この上に5枚寝るのカプラを載せるときちんと蓋ができる。

 ADHD傾向の子どもは、注意過敏である。ジェンガカプラを作っている途中で、中にカプラが入るととりたがる。「とってはダメ」「ダメなものはダメ」としっかり教える必要がある。理論的には上に蓋をして、アーチの力で崩れないようになってから、とればよいのだ。でも途中でとろうとするとアーチの力がないので、すぐに崩れるのである。世の中はアバウトでよい。完璧は求めてはいけないことを教える必要もある。


 蓋をし終わって、アーチの力で崩れないようになったら、中に落ちているカプラを拾う。その後に。カプラを1枚持って、カンカンと叩いて、カプラを抜いていく。一見、すぐに崩れそうだが、なかなか崩れなくてサスペンス劇場となる。カプラジェンガは作って楽しみ、壊して楽しめる優れものです。


 カプラのかまくらはわかりやすいように小さなもので作ってみました。大きなものを作るには大きな円を作ればよい。まず寝るを並べる。

 その上に起きるを置き、次に寝る・起きる・寝るを繰り返して置きます。

 ある程度の高さになったら、起きるをやめて寝るだけにする。

 寝るになったら、クロスさせながら、入り口部分を伸ばしていく。

 このかまくらはミニなので、すぐに左右が結ばれているが、大きなものを作るとどんどんどんどん左右から伸びていくことになる。

 左右が近づいたら、左右をつなぐようにする。その後はアーチの力でどんどんつないでいく。

 完全につながったら、どんどん上部を小さくしていって、狭くしていく。

 どんどん円錐状に狭くしていく

 最後はやはり4枚でクロスにする。

5枚で蓋をしたら、中に落ちているカプラを拾いましょう。

 カプラの鎌倉を作った後は、中に入って記念写真を撮りましょう。壊す時は、何人が入ることが出来るか、ギュウギュウにして、最後にビッグバンで壊すのも楽しいものです。

カプラを片付ける時は、同じ方向に10本程度持って、箱に入れる人に届けましょう。後片付けは働きの要素ですから、口を閉じて、速やかに、自分の出来ることをしっかりやらせることが大切です。

 

 ガードナーの多重知能理論は図の7つの知能に博物的知能をプラスして8つの知能がそれぞれ独立して存在しているとの理論である。
 カプラをやる時も多重知能理論を上手く活用して取り組みことが良いと私は考えている。カプラの活動は多重知能理論を実際に活用できるユニバーサルデザイン的な活動でもある。カプラを積むことは身体運動的知能と空間的知能が必要である。でも空間的知能があまりなくても寝るだけで積むこともできる。建物などが崩れないように積むためには論理数学的知能も必要である。また友達の作品を見て学ぶことも多いし、友達と一緒に作品を完成させることもある。この時は対人的知能が必要となる。カプラはとても壊れやすいので壊れても我慢してまた活動をすることが多い。この我慢することは個人内知能を養う。(自律心を培う)
 最終的に作ったみんなの作品をカプラでつないで町作りをする。これは対人的知能を高め、仲間意識を強くする。
 いろいろな知能をカプラ活動は培うことが出来る。いろいろな知能に依拠するので、子ども達の作った作品は多種多様となる。高く積む子ども・カプラで字を書く子ども・おままごとの部屋・ドミノ倒し・お城作りなどなど同じ作品はないのである。
 カプラの活動は全体からみれば静的な活動である。そこでわらべ歌やアクション折り紙などで身体運動的知能と音楽的知能と言語的知能を少し強化するようにしている。90分の保育園児の活動で30分のアクション折り紙やわらべ歌を入れて、その後カプラ活動をしている。

 

 脳と感情  
       

 脳の話をデスカバリージャパンでやっていた。私流に簡単に理解したものを紹介する。脳は外部の刺激に原始的な部分で瞬時に判断して、身体の各部に行動を起こさせると言うのである。危険なことがあれば筋肉が硬直して臨戦態勢に入る。意外なことがあると頬の筋肉が緩んで笑ったような顔になる。びっくりすることがあると逃げるように筋肉が動くのだそうだ。こうした筋肉等の動きの信号が脳の前頭葉にいく。前頭葉ではこの信号を受けて、楽しい。怖い、おかしい、面白い、怒りなどの感情へとつながるのだそうだ。つまりある刺激に対して、人間の脳はとりあえず、自分の身を守るために反応を起こす。この反応が前頭葉にいくことで感情が芽生えるのであるとのことだ。つまり悲しいとの感情が先ではなくて、刺激に対して泣くから悲しい感情が芽生えるのだというのだ。
 脳の障害によって、ある刺激(例えば面白いと感じるような刺激)に対して、オートマチックに頬の筋肉は微笑を浮かべるが、前頭葉にフィードバックされた刺激が前頭葉にいかないと、楽しいとか面白い可笑しいとの感情が芽生えないのだという。つまり刺激に対して筋肉は反応するが感情が出てこなくなるのだそうだ。この感情が出なくなると、物事を判断する能力が無くなるという。人間は楽しいとか面白いとか辛かったとか怖かったとか危険に感じたとか悲しかったとか美味しかったとかの感情を元に判断をするのだそうだ。感情が無くなると判断基準が無くなるので、買い物をすることも判断できないので出来なくなり、その人の奥様がみんな買い物をしてあげるしかない。たしかに、白い服を買うか青い服を買うかは感情や感性の問題である。
 第1に、このような脳の構造を考えてみると、世間で言われている『感情的に叱ってはいけない』などとの話はずいぶんと間違っていることになる。私流に考えると『感情を込めて叱らなくてはいけない。しかし感情に流されないでコントロールすることが必要である』とのことになるのではないだろうか。感情を大切にしないで冷静に客観的に声を荒げないでなどとの主張は空論ではないだろうか。
 第2に最近の切れやすい子どもに対する対応でも脳の構造と感情の関係を上手くコントロールしていくことが大切と考えられる。最近の子どもは欲求不満耐性(欲求が満足されないことに耐える力)が低いと言われている。ちょっとしたことでかっとなる子どもが多い。この一つの要因に失敗を恐れる傾向があるのではないかと思われる。子どもだけではなくて、保護者も指導員もおじいちゃんもおばあちゃんもである。ですから失敗をダメなことと思わないで、ポジティブに受け入れるようにすることが必要である。折り紙はチラシを正方形に裁断しておいて、失敗したらちぎって捨てて、チャレンジを何回もさせるのがよい。1日に折り紙は3枚までなどのルールはマイナスではないだろうか。カプラの活動をやっていて崩れたら『残念だったね』ではなくて、『いい音がしたね』と声をかけよう。友達といざこざになったら『人生はそんなもんよ。』と言ってあげたらどうだろうか。幼児がおもちゃの取り合いをしたら、もっと面白い遊びを提供してあげれば良いだろう。『誰も一緒に遊んでくれない』との訴えに『あなたも悪い点があるんじゃない?』とか『ちゃんとお願いしなさい』というよりも『先生と遊んでくれないかな』と子どもに遊びを教えてもらえばよいのではなかろうか?
 第3にある刺激に対して脳がオートマチックに反応して、その反応が前頭葉にフィードバックされているのだから、ある刺激に対する反応そのものを変えてあげることが重要となる。例えばカプラを積んでいてカプラが崩れたとしよう。崩れると共に筋肉が硬直して息が一瞬とまる。このままにしておくと前頭葉に『やってしまった。』『誰かに壊された』『悲しい』『悔しい』などのネガティブな感情が芽生える。この感情を起こさせないように崩れた瞬間に『いい音がしたね』との声かけをしてあげれば、『そうだ。私がいい音をさせたのだ』とのポジティブな感情が芽生えて、カプラに対する集中力が増し、活動が継続する。この場合に『いい音がしたね』との声かけはネガティブな感情が芽生える前にすることが大切である。私達は少なくとも子どもよりも先に生き始めたのだから、そのタイミングを理解できるであろう。それが先生との意味であると私は思う。 
 第4に脳はけっこうだまされていることに気づくことである。子どもの声に耳を傾けろと言いますが、子どももけっこう思い込みが多いものなのです。思い込みが強い子ども(大人も)自分の都合のよいように見えた聞こえたとなるものです。脳は適当に判断しているのです。ですから子ども(大人)の主観的な思い込みを否定はしないで、でも事実そのものだと思わないことも大切です。そうでないと脳の修正機能に騙されてしまいます。逃した魚は大きく見えたのは本当ですが、大きかったとは言い切れないことがたくさんあるのです。現場主義・実践主義の観点から日ごろのその人の活動パターンを理解して対応することが必要となると思います。
 2012年9月21日追加
 秋田へ9月17日に研修会に行ってきました。富安さんがカプラの指導者講習会をしました。そこで集中すると口も開かなくなるとの話が出ました。「よい音がしたね」との声かけはしなくてもよいケースもあることを学習しました。

         
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