遊びの手法   身近な地域福祉援助活動  ホームトップ  詳細トップ  (2010年9月12日) 

                                         児童館・児童クラブにおける身近な地域福祉活動

有明児童センター 児童健全育成指導士 田中 純一

1、       はじめに

 児童館・児童クラブにおいては様々な活動を通して児童の健全育成をすることが求められている。児童の健全育成は児童館においては、遊びを中心と考えられているが、私自身はたんに遊びだけではないと思っている。

例えば折り紙遊びをする場合で考えてみよう。折り紙を購入してきて、子ども達に提供して、遊ばせる。これで終わっているならば健全育成的な手法とは考えることができないであろう。たんに紙を消費したにすぎないからである。健全育成と考えるならば、近所のコンビニから廃棄するチラシをもらってくる。それをカール等の器具を使って正方形に裁断する活動を子ども達と一緒に行う。もちろん、チラシから切り落とされて紙はもっと小さく正方形に裁断し、残りは自治会等のリサイクルにする。チラシで作って正方形の折り紙でユニット折り紙等を製作する。出来上がった折り紙で遊んだり、近くの老人ホーム等への慰問活動に使う。要らなくなった紙や失敗した紙は裁断機で裁断して紙リサイクルに使用する。このように一つの遊びを開始する前に、その準備作業があり、遊びの過程があり、後片付けの作業があるという一回転した流れを見に付けさせることが必要である。その他の縄跳びやゲーム運動遊びなども準備活動と後片付け等の作業やお手伝いを含めた一回転するものと考えることが必要であると思う。

作業を含めた遊びを軸とした一回転した活動が健全育成においては必要である。それを手法的に考えてみると、社会福祉援助の手法の中の地域福祉活動・集団援助活動・個別援助活動の手法がお互いに関連しあいながら、展開している過程でもあるととらえることが必要となる。つまり、チラシなどを提供してくれるコンビニを探したり、裁断をした紙をリサイクルする自治会などと連携をしたり、折り紙を裁断してくれるボランティアを募集したり、作った折り紙をプレゼントする老人ホーム等と連携することが地域福祉活動である。次に折り紙遊びを通して、自己中心的な子ども集団が人格的で思いやりのある集団へと変容させていくことが集団援助活動である。5人程度のフェイスtoフェイスのグループ集団を5〜10数グループ作り、グループ内の人間関係とグループ間の人間関係をより良いものにしていくことが必要である。児童館児童クラブへの参加者の中には、自己中心でADHD傾向の子どもや、仲間はずれにされている子ども・家庭環境に問題等があり粗暴な子ども・社会性が欠如している子ども・内気な子ども・身体に障碍のある子どもなど個別援助が必要な子どもも存在している。児童館児童クラブの職員は基本的に複数人で指導していることが多い。そこで、折り紙遊びの中で一人が全体指導して、もう一人は問題行動等を抱えた子どもが上手く集団の中で適応できるように援助していくことが必要となる。もちろん全体指導と個別指導は(言い換えれば集団援助活動のワーカーと個別援助活動のワーカーは)連携をいつも持ちながら、適時、担当する人も代わりながら実施するものである。

社会福祉援助総論の中でソーシャルプランとの考えがある。折り紙を通して地域の仲間が増える。紙等のリサイクルが実現して、二酸化炭素を削減して、エネルギー循環社会を目指す等のプランを提供すればそれは大きなソーシャルプラン・ソーシャルアクションということになるであろう。

2、児童館・児童クラブにおける地域福祉活動が必要とされる法的な根拠

 児童館・児童クラブの運営には多額の国民の税金がつぎ込まれている。例えば、厚生労働省の年間予算をみても、児童クラブの運営費で(1)放課後児童クラブ運営費(ソフト事業) 234億85百万円( 24,153か所 → 24,872か所)となっている、ハード面での整備費で(2)放課後児童クラブ整備費等(ハード事業) 38億11百万円(か所数 394か所 → 428か所)となっている。国の児童クラブ関係予算で272億96百万円となっているのである。もちろんこれ以外に各市町村の負担があるわけである。こうした税金の投入があるわけなので、当然のこととして活動においては法的な根拠が定められている。

放課後児童健全育成事業等実施要綱(抄)
T 放課後児童健全育成事業
趣旨
児童福祉法(昭和22年法律第164号。以下「法」という。)第6条の2第2項の規定に基づき、保護者が労働等により昼間家庭にいない小学校に就学しているおおむね10歳未満の児童に対し、授業の終了後等に小学校の余裕教室、児童館等を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図るものである。
実施主体
本事業の実施主体は、法第34条の7の規定に基づき、市町村(特別区を含む。以下同じ。)、社会福祉法人その他の者(以下「市町村等」という。)とする。
対象児童
本事業の対象児童は、法第6条の2第2項の規定に基づき、保護者が労働等により昼間家庭にいない小学校1〜3年に就学している児童であり、その他健全育成上指導を要する児童(特別支援学校の小学部の児童及び小学校4年生以上の児童)も加えることができるものであること(以下「放課後児童」という。)。
運営
本事業の運営は、次により行うものであること。
(1)本事業の実施に当たっては、遊びを主として放課後児童の健全育成を図る者(以下「放課後児童指導員」という。)を配置し、放課後児童を受け入れるものであること。
(2)放課後児童指導員の選任に当たっては、児童福祉施設最低基準(昭和23年厚生省令第63号)第38条に規定する児童の遊びを指導する者の資格を有する者が望ましいこと。
(3)本事業は、放課後児童の就学日数、地域の実情等を考慮し、年間250日以上開所すること。(ただし、平成21年度までは、特例として200日以上でも国庫補助の対象とする。)また、開所時間については、1日平均3時間以上とすること。ただし、長期休暇期間などについては、子どもの活動状況や保護者の就労状況等により、原則として1日8時間以上開所すること。
(4)本事業は、小学校の余裕教室や小学校敷地内の専用施設のほか、児童館、保育所や団地の集会室などの社会資源を活用して実施すること。なお、同じ建物内で、別添1に基づく放課後子ども教室推進事業(以下、「放課後子ども教室推進事業」という。)など、すべての子どもを対象とした活動拠点(居場所)の提供を併せて行う場合には、放課後児童のために間仕切り等で区切られた専用スペース又は専用部屋を設け、生活の場としての機能が十分確保されるよう留意すること。
(5)子どもの情緒の安定や事故防止を図る観点から、1クラブ当たりの放課後児童の人数が一定規模以上になった場合には、分割を行うなど適正な人数規模のクラブへの転換に努めること。(ただし、平成21年度までは、経過措置として1クラブ当たりの児童数が71人以上の場合も国庫補助の対象とする。)
(6)本事業は、法第6条の2第2項及び児童福祉法施行令(昭和23年政令第74号)第1条の規定に基づき、利用する放課後児童の健全な育成が図られるよう、衛生及び安全が確保された設備を備える等により実施されなければならないものであり、その活動に要する遊具、図書及び児童の所持品を収納するためのロッカーの他、生活の場として必要なカーペット、畳等を備えること。
(7)本事業の実施に当たっては、家庭や放課後子ども教室推進事業の担当者及び関係機関との連携を図ること。
(8)本事業の実施に当たっては、子どもの様子の変化や小学校の下校時刻の変更などに十分対応できるよう、小学校の教職員との間で迅速な情報交換ができる体制を整備すること。
(9)本事業の実施に当たっては、地域における放課後児童の状況を的確に把握するとともに、法第56条の6第2項の規定に基づき、本事業を行う他の者との相互連携、放課後児童及びその家庭からの相談等地域の実情に応じた積極的な支援を行うように努めなければならないこと。
10)本事業の実施に当たっては、本事業の加入申込み等に係る書類について、所定の様式を定め整備すること。
(11)
本事業の実施に当たっては、児童の安全管理、生活指導、遊びの指導等について、放課後児童指導員の計画的な研修を実施するものとし、また児童館に勤務する児童厚生員の研修や放課後子ども教室推進事業の担当者研修との連携を図ること。また、都道府県においても、同様に放課後児童指導員の計画的な研修を実施すること。
(12)
市町村は、児童の保護者、児童委員、民間の児童健全育成ボランティア等の協力を得て本事業の支援に当たるものとすること。
(13)
市町村は、法第21条の10の規定に基づき、放課後児童の本事業の利用に関する相談及び助言、地域の実情に応じた本事業の実施及び本事業を行う者との連携等により、放課後児童の本事業の利用の促進に努めなければならないこと。
事業の内容
本事業は、次の内容・機能を有するものとすること。
(1)放課後児童の健康管理、情緒の安定の確保
(2)出欠確認をはじめとする放課後児童の安全確認、活動中及び来所・帰宅時の安全確保
(3)放課後児童の活動状況の把握
(4)遊びの活動への意欲と態度の形成
(5)遊びを通しての自主性、社会性、創造性を培うこと
(6)連絡帳等を通じた家庭との日常的な連絡、情報交換の実施
(7)家庭や地域での遊びの環境づくりへの支援
(8)その他放課後児童の健全育成上必要な活動
留意事項
(1)本事業は、その目的を異にするスポーツクラブや塾等、その他公共性に欠けるものについては対象としないものであること。
(2)本事業の実施主体は、政治的又は宗教上の組織に属さないものであること。
費用
(1)国は、上記2〜6の要件を満たした次の事業(放課後児童が10人以上に限る。ただし、開設日数が200〜249日の場合は、放課後児童が20人以上に限る。)に対して、別に定めるところにより補助するものとする。
@ 市町村が実施する事業又は助成する事業に対して都道府県が補助する事業
A 指定都市及び中核市が実施する事業又は助成する事業
(2)市町村等は、本事業を実施するために必要な経費の一部を、保護者から徴収す
ることができるものとする。

児童館の設置運営要綱

第一 総則

一 目的

児童館は、児童福祉法(昭和二二年法律第一六四号)に基づく児童厚生施設であって、児童に健全な遊びを与えて、その健康を増進し、情操を豊かにすることを目的とするものであること。

二 種別

児童館の種別は次のとおりとする。

() 小型児童館

小地域の児童を対象とし、一定の要件を具備した児童館。

() 児童センター

()の小型児童館の機能に加えて、児童の体力増進に関する指導機能を併せ持つ児童館。

(特に、前記機能に加えて中学生、高校生等の年長児童(以下「年長児童」という。)の情操を豊かにし、健康を増進するための育成機能を有する児童センターを「大型児童センター」という。)

() 大型児童館

原則として、都道府県内又は広域の児童を対象とし、一定の要件を具備した児童館をいい、次のとおり区分する。

ア A型児童館

イ B型児童館

ウ C型児童館

() その他の児童館

()()及び()以外の児童館。

三 設備及び運営

児童館の設置及び運営については、児童福祉施設最低基準(昭和二三年厚省令第六三号。以下「最低基準」という。)に定めるところによるものであること。

なお、小型児童館、児童センター及び大型児童館については最低基準によるほか、次の第二から第四までに定めるところによること。

第二 小型児童館

一 機能

小地域を対象として、児童に健全な遊びを与え、その健康を増進し、情操を豊かにするとともに、母親クラブ、子ども会等の地域組織活動の育成助長を図る等児童の健全育成に関する総合的な機能を有するものであること。

二 設置及び運営の主体

設置及び運営の主体は、市町村(特別区を含む。以下同じ。)並びに民法(明治二九年法律第八九号)第三四条の規定により設立された法人(以下「民法法人」という。)及び社会福祉法人とすること。

三 設備及び運営

() 設備

ア 建物の広さは、原則として、一八五・一二平方メートル以上(都市部で児童館用地の取得が困難と認められる場合等においては、一三八・八四平方メートル以上)とし、適当な広場を有すること。

イ 建物には、集会室、遊戯室、図書室及び事務執行に必要な設備のほか、必要に応じ、静養室及び放課後児童クラブ室等を設けること。

ただし、他の社会福祉施設等を併設する場合で、施設の効率的な運営を期待することができ、かつ、利用する児童の処遇に支障がない場合には、原則として、遊戯室、図書室及び放課後児童クラブ室以外の設備について、他の社会福祉施設等の設備と共用することができる。

() 職員

二人以上の最低基準第三八条に規定する児童の遊びを指導する者(以下「児童厚生員」という。)を置くほか、必要に応じ、その他の職員を置くこと。

() 運営

ア 開館時間、開館日数等については、設置された地域の実情を勘案して設定すること。

イ 運営管理の責任者を定めるとともに、指導する児童の把握、保護者との連絡、事故防止等に関する事項を規定する運営管理規定を定めること。

ウ 運営委員会を設置し、その運営管理について意見を徴すること。

() その他

小型児童館が、児童福祉法第二四条第一項ただし書に基づいて使用される場合には、最低基準の保育所に関する規定の趣旨を尊重すること。

四 国の助成

国は、予算の範囲内において、小型児童館の整備及び民営の小型児童館の運営に要する費用を、別に定めるところにより補助するものであること。

これらを要約して厚生労働省は放課後児童健全育成事業の内容を以下のように要約している。

放課後児童健全育成事業について(厚生労働省ホームページよりhttp://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/houkago-jidou.html

概要
 児童福祉法第6条の2第2項の規定に基づき、保護者が労働等により昼間家庭にいない小学校に就学しているおおむね10歳未満の児童(放課後児童)に対し、授業の終了後に児童館等を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図るものです。

設置状況

全国

16,685か所

登録児童数

749,478人

(平成19年5月1日現在:厚生労働省雇用均等・児童家庭局育成環境課調べ)

[運営主体別数]

公営

7,409か所

民営

9,276か所

実施主体

市町村、社会福祉法人、父母会、運営委員会、その他の者

実施場所

児童館、学校の余裕教室、学校敷地内専用施設など

事業内容

児童福祉法第6条2第2項の規定

 この法律で、放課後児童健全育成事業とは、小学校に就学しているおおむね10歳未満の児童であつて、その保護者が労働等により昼間家庭にいないものに、政令で定める基準に従い、授業の終了後に児童厚生施設等の施設を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図る事業をいう。


第七条  この法律で、児童福祉施設とは、助産施設、乳児院、母子生活支援施設、保育所、児童厚生施設、児童養護施設、知的障害児施設、知的障害児通園施設、盲ろうあ児施設、肢体不自由児施設、重症心身障害児施設、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設及び児童家庭支援センターとする。

上記のように放課後児童健全育成事業でも児童館事業でも地域福祉活動に寄与することが児童館・児童クラブでは求められている。これらの法的な根拠を前提にして児童館・児童クラブでは地域福祉活動の一助を担うことになっているのである。

3、地域福祉活動とは何か

社会福祉援助技術各論UA (http://www.geocities.jp/yamanaka28/sya3.htm

(1)   地域援助技術
地域住民に共通するニーズと課題を解決するために、住民社会のニーズの把握や公私の機関・団体などの活動主体の組織化の支援。社会資源の動因や調整・連携、開発を支援する。また、社会福祉計画の立案や運営管理を通じ、社会福祉的な地域社会づくりを目指した援助技術である。

yahoo智恵袋より

「社会福祉援助技術」の「関連援助技術」とはどんなものか簡単に教えていただけますか? よろしくお願い致します。

社会福祉援助技術は、直接援助技術、間接援助技術および、その他の関連援助技術の3つに分けられます。。
直接援助技術にはケースワーク(個別援助技術)、グループワーク(集団援助技術)があり、援助や支援を必要としている人の生活に直接的に用いられる援助方法です。関連援助技術はより広範囲の社会への介入を目指して、コミュニティワーク(地域援助技術)、ソーシャルアクション(社会活動法)等があります。関連援助技術はカウンセリングなどです。専門の分業化に伴い問題解決が返って困難になったため、最近ではこれらを統合して、対象者が持つ問題にふさわしく対応するための試みが行われています。また、関連援助技術は、ネットワーク、ケアマネジメント、スーパービジョン、カウンセリング、コンサルテーションの5つから成っています。

研修種別と設定科目(財団法人児童健全育成推進財団より)

研修体系化の目的

 子どもの健全育成には、対人関係能力に優れた“人財”が必要です。高価な遊具や広いホールよりむしろ重要な環境と言えます。また、複雑多様化する子どもの福祉課題には専門的な理論やスキルが必要不可欠であり、“管理人”や“子守り”の意識では対応することができません。「安全・安心」と「健全育成」を保障する場で支援者の力量不足から起きる事故・事件は決してあってはならないことです。しかし、財政難の折から自治体によっては、職員が専門性もあいまいに採用されるケースやおよそ不充分

な研修実態があることも否めません。

 育成財団では、児童厚生員(児童の遊びを指導する者)の研修を体系化することにより、児童館・放課後児童クラブの活動の質を全国的に向上させるとともに、その役割や専門性を明確にすることを目的としています。

1)基礎研修

 主に初任者を中心とした児童健全育成に携わるすべての関係者のための基礎研修です。

@ 「児童厚生員等基礎研修会」

 児童館・放課後児童クラブの基本的機能や児童健全育成の目的、児童期の発達課題や遊びの意義等の理論科目と、具体的プログラムなどの指導技術を修得する実技科目が設定されており、子どもや親への適切な援助と指導技術の向上を目指します。

A「都道府県(指定都市)内児童厚生員等研修会」(育成財団委託研修)

 各都道府県内で育成財団の研修体系に準拠した児童厚生員等研修会が開催されています。施設単位での研修や広域の研修の機会が少ない職員の方々にも、「早く」「近く」で参加できる仕組みとなっています。各地での研修の科目・日程・回数は、育成財団が承認した県児連等がそれぞれ設定しています。

【理論科目】

健全育成論児童福祉の理念を根底に家庭および地域における健全育成の概論を理解する。

児童館・児童クラブ論児童館・児童クラブの機能と運営のポイントを理解する。

児童の発達理論子どもの遊びや生活と発達の関連について理解する。

安全指導・安全管理健全育成活動上の安全指導と安全管理の基本について理解する。

児童福祉援助技術総論児童福祉現場での対人援助技術の理論全般や児童ソーシャルワーカーの役割を理解する。

個別援助活動 ケースワークの原則や特徴に関する各論とともにケースワーカーの役割を理解する。

集団援助活動 グループワークの原則や特徴に関する各論とともにグループワーカーの役割を理解する。

地域福祉活動 コミュニティワークの実践過程の各論とともにコミュニティワーカーの役割を理解する。

コミュニティソーシャルワークの理論

特定非営利活動法人日本地域福祉研究所http://nippon.zaidan.info/seikabutsu/2004/00580/pdf/0001.pdf#search='コミュニティワーク 理論'

第2章コミュニティソーシャルワークの概念

コミュニティソーシャルワークの概念は、イギリスで1982年に公刊された通称「バークレイ報告」で公式に示された。しかし同報告では少数派のハドレイが「その意味するところは、かなり古くからのものである。」と述べたように、その歴史的源流は古い。加えて、ソーシャルワーク理論の形成において構築されてきた伝統的なコミュニティ・オーガニゼーションやコミュニティワークという概念とも異なる。日本では大橋謙策が1990年代後半以降にコミュニティソーシャルワークの考え方、援助方法とそれを展開できるシステムの必要性を再三強調してきたが、当然、イギリスで始められたバークレイ報告時代の用法とも異なる。また、バークレイ以降のコミュニティソーシャルワークも幾つかのジレンマを抱え、評価に幅ができていることも事実である。こうしたなかで海外でもまた日本でも、総じて研究者によってコミュニティソーシャルワークの概念や用法はさまざまである。当然、コミュニティソーシャルワークとは何か、その理解に幅が生じやすい。そこでこの章では、今一度コミュニティソーシャルワークの歴史的背景を考察した上で、その本質的な特徴と基本的な構成要素などの把握を主眼において、その概念をある程度整理しておきたい。

第1節歴史的背景

コミュニティソーシャルワークの実践と理論化はイギリスから始まっている。とくに実践、つまり理論のルーツは19世紀末からのセツルメント活動から由来したソーシャルワーク実践にあると言われている。

(1)ルーツとしてのセツルメント活動

セツルメント活動とは、当時の知識人層(セツラーと呼ばれる)がスラムと呼ばれる大都市の貧困地域に住み込み(セツルメント)、人格的接触を通じて福祉の向上を図るために行った様々な活動をいう。セツルメント活動は、スラムという地理的要因や共通の生活障害による少数者集団の地域における生活者としての主体形成とその条件づくりを目標とした。この活動は、プロテスタント型ヒューマニズムに支えられた社会改良的活動であり、学生や牧師、有産市民によるボランタリー・アクションを特徴としていたが、社会教育を重視した地域住民の組織化や、住民間の相互作用を促進し社会連帯を広げる活動、生活を共にする中で住民と経験を分かち合いさまざまな機関や団体との接触を広げる活動、自治体に働きかけ公共サービスを改善する運動などかなり幅の広い実践を行っていたことが知られている。こうしてセツルメント活動は、近代的社会福祉実践の基盤を形成し、今日の住民参加と自治の発展の思想的基盤も形成した源流である。セツルメント活動は慈善組織協会(COS)と並んで、ソーシャルワークの理論化にも貢献した。セツラーたちは、貧困にあえぐ住民たちのよき相談相手となり、子どもたちの教育や青少年のクラブ活動、レクリェーション、市民相談所の運営など日々の実践を担うだけではなく、住宅改善や教育要求、法的整備などを自治体に求める活動など多様な実践へ広がりを見せていくようになったが、これら社会資源の改善と開発は、住民との対面的な日々の実践を積み上げる過程で認識していったものであった。これらの展開はコミュニティケアなかでも地域ネットワークの緊密な発展がその原動力となったものであり、1968年のシーボーム委員会報告がサービスの分権化と地域ネットワークを重視した背景でもある。こうしてこの時代における人と環境との直線的地理的結びつきが、コミュニティソーシャルワーク実践の原型を形作っていった。その後、「バークレイ報告」(1982 年)がソーシャルワーカーをして「自分自身をネットワークの支柱と見なさなければならない」とした根拠は、こうした歴史の経験的事実に裏書きされている。

(2)コミュニティワークとの概念整理しかし、イギリスでは、ソーシャルワークの方法論としてコミュニティソーシャルワークという概念の誕生前に、1960年代後半以降の方法論の専門分化という理論形成の流れを受けてコミュニティワークの概念が確立してくる。その契機となったのは、「シーボーム委員会報告」(1968年)、「スコットランド・ソーシャルワーク法」(1968年)、「ガルベンキアン報告」(1969年)、「地方自治体社会サービス法」(1970年)など一連の「シーボーム改革」と呼ばれるコミュニティケア政策の拡充・強化が進められたことによる。とくに1969年からインナー・シティ問題に取り組んだコミュニティ・デベロップメント・プロジェクト(CDPs)では、「困難や不利益な状況にある人たちの力を強めて、彼らが共通しておかれた境遇について、もっとコントロールできるようにする」ためにコミュニティワークと呼ばれる方法が地域を基盤に展開されてくる。D.ジョーンズによれば、コミュニティワークは、アメリカで理論化が進行したコミュニティ・オーガニゼーションだけではなく、土地の改良や住宅の開発、地域教育の振興、社会計画、ボランタリー・アクションまでを含む幅の広い地域環境改善の技術として捉えられていた。その上で、コミュニティワークを「サービスの開発」「社会計画」「地域集団の育成」の3つのモデルに類型化した。つまりコミュニティワークは、社会福祉実践に固有な援助方法・技術という枠組みを越えたコミュニティケアの社会サービス全般に応用されていったこともあり、改めてソーシャルワーク固有の理論化が必要になってきたというイギリスなりの事情が生じたため、コミュニティソーシャルワークの理論化が課題となってきたという背景がある。このように、コミュニティワークとコミュニティソーシャルワークの両者は、理論と中核となる技法は共有する部分が多い。ジョーンズやスメールらは、しかしながら、基本的な違いを理解する必要があるとして、「コミュニティワークは、社会的正義や社会的不平等にかかわる問題をローカルレベルにおける政策変化を促しながら、地域住民を組織化し、集合的なアクションによりその解決を図っていくのに対し、コミュニティソーシャルワークは、ローカルサービスへのアクセスの利便性と効率性をより高めるシステムに焦点を置きながら、個々のサービス利用者のニーズを丁寧に満たす方法を模索するアプローチである」と述べている。

第2節代表的な概念とその背景

(1)ソーシャルワークとコミュニティソーシャルワーク

さてソーシャルワークと呼ばれる社会福祉援助活動では、援助利用者である個を大切にしながら、個を支える社会システムをどう形成するかが、合わせて追求される古くて新しい命題である。ケースワークの母と呼称されるM.リッチモンドは、最初から「小売り的方法から卸売り的方法への上昇」「卸売り的方法から小売り的方法への下降」というソーシャルワークが本質とする全体像とその循環のプロセスを描いていた。しかし彼女は、専門職業の確立を目標に、先ずは個を大切にする「小売り的方法」であるケースワーク理論を先に体系化することに心血を注いだ。その理由は医者であれ、弁護士であれ、当時の対人援助の専門職が総じて個人に対応する職業人としてその位置を確立しライセンスを得ることが近代社会の要請であったことによる。しかしその後アメリカのケースワークは「医学モデル」に準拠して理論化していったこともあり、個人の内面への関心という精神分析への傾斜や心理主義的偏向に陥り、「卸売り的方法」との機械的分離が進行していった。両者はその後、ケースワーク、グループワーク、コミュニティ・オーガニゼーションというソーシャルワークの3分法で発展していくことになった。一方、イギリスでは先に述べたようにコミュニティケアの長い伝統からソーシャルワークの理論化においても小売り的方法と、「」「卸売り的方法」は分けがたいものとして理論化が意識されてくる。こうして、『ソーシャルワーカーの役割と任務』と題したバークレイ報告において、コミュニティソーシャルワークという新しい考え方が表明された。コミュニティソーシャルワークとは、P.バークレイら多数派委員の見解では、「地域を基盤としたカウンセリングと社会的ケア計画の統合したソーシャルワーク実践」ということができる。バークレイらは、一定の人口を有する地理的エリアでのインフォーマルケアや地域ネットワークを重視し、ソーシャルワーカーがチームで実践する援助システムを提案した。その際、「一般原則として、社会的ニーズを有する家族や個人は、一人のソーシャルワーカーによって担当されるべきである」(報告3-12)として一人のジェネラリスト・ソーシャルワーカーによる個人担当制と地域担当制の併用を提案した。この点では、日本の実践でも伝統的に保健所保健師の配置とその働きに期待したモデルと共通するものである。なお、イギリスのソーシャルワーク辞典では、コミュニティソーシャルワークを「地域を基盤とした支援を促進または維持しようとするソーシャルワーカーのアプローチ」と定義している。その具体的内容では、インフォーマルな支援を含むソーシャルネットワークの構築を重視している。

(2)大橋理論にみるコミュニティソーシャルワークの概念

さて日本では、大橋謙策がコミュニティソーシャルワークの重要性を1990年代後半からしばしば強調し、次のように仮の定義をした。

「コミュニティソーシャルワークには、フェイス・ツゥー・フェイスに基づき、個々人の悩みや苦しみに関しての相談(カウンセリング)や個々人が自立生活上必要なサービスは何かを評価(アセスメント)し、必要なサービスを提供する個別援助の部分とそれらの個別援助をならしめる環境醸成やソーシャルサポートットワークづくりとの部分があり、コミュニティソーシャルワークはそれらを総合的に展開する活動である。」この定義は、バークレイら多数派意見の定義を下敷きにしている。やや違うのは、カウンセリングや、バークレイ報告では提起されなかったケアマネジメントのプロセスであるアセスメントなどが個別援助の手段に位置づけられており、社会的ケア計画という概念を用いず、環境醸成とソーシャルサポートネットワークを示している。この背景には、「バークレイ報告」以降に発展したソーシャルワーク理論、つまり利用者の直接的相談援助からケアマネジメント、チームアプローチ、セルフヘルプ・グループの支援、サポートネットワークづくり、コミュニティケア計画の作成を含むソーシャルワーカーの幅広い役割と任務を日本なりに整理し直し、コミュニティソーシャルワークの概念をより豊に深化させたいねらいがあったと思われる。実際、大橋は2003年に改めてコミュニティソーシャルワー「コミュニティソークを次のように述べている。シャルワークとは何かを改めて整理すれば、地域に顕在的に、あるいは潜在的に存在する生活上のニーズを把握(キャッチ)し、それら生活上の課題を抱えている人々との間でラポート(信頼関係)と契約の基づきフェイス・ツー・フェイスの形式によるカウンセリング的対応も行いつつ、その人や家族の悩み、苦しみを聞き、その人や家族が抱えている課題の解決にはどのようなサービスや支援が必要かを明らかにするアセスメントを行い、本人の求めとソーシャルワーカーの専門的判断とに基づき、インフォームドコンセントを行って必要なサービスを総合的に提供するケアマネジメントを手段とする援助の過程とそれらの個別援助を通しての地域自立生活を可能ならしめる生活環境の整備や近隣住民によるインフォーマルケアの組織化や福祉サービスを必要とする人に対し、差別と偏見をもつことなく、共に地域社会を構成する住民として生きていく、ソーシャルインクルージョンの考え方を受け入れられる精神的環境醸成とを統合的に展開する活動である。」前出の定義よりかなり具体的構造的で、ケアマネジメントの考え方を大幅に組み込んでいる。「ニーズキャッチ」の方法は、援助技術の課題であり、同時に援助システムの確立が欠かせない。「カウンセリング的対応」とは、ラポールと契約に基づく利用者と援助者との直接的コミュニケーションと相互作用に限定して用いており、バークレイらがケースワークという用語を意識的に避け、カウンセリングをその替わりに用いたのとはニュアンスが異なる。ケアマネジメントでは、「アセスメント」「サービスの総合的な提供」を示しているが、そのプロセスでは、利用者の参加を前提とした「インフォームドコンセント」の重要性を強調している。個別援助活動の全体は、ケアマネジメントを手段とするソーシャルワークが担い、個を支えるソーシャルワークには、生活環境の整備、インフォーマルケアの組織化(近隣住民)、チームアプローチ、地域ネットワークづくり、地域組織化活動、ボランティアとの協働、ソーシャルインクルージョン、福祉教育を中心とした精神的環境醸成などが含まれている。まとめると、コミュニティソーシャルワークは、ケアマネジメントを軸とする個別援助を担いながら、援助を個別化するだけでなく、将来の同様なニーズの発生を予防するためにむしろ社会化する志向に力点が置かれた実践である。大橋理論では、コミュニティソーシャルワークは個々の自立生活支援を丁寧に担いながらもそれに留まらず、生活基盤の整備に向けた地域資源の活用や開拓、社会関係の調整と改善に向けた啓発・教育活動、福祉計画づくり、福祉利用者や広範な市民の組織化、地域における総合的なサポートシステムの構築などを主な柱としたソーシャルワーク実践の統合的な方法として捉えられている。

4、身近な地域福祉活動(コミュニティワーク)

 一般的にコミュニティワーク・グループワーク・ケースワーク等を行うプロセスは最初にアセスメントといって事前にどのような状況にあるかを査定することが必要とされている。このアセスメントの手法にもいろいろな手法がある。聞き取り調査や観察法やインタビュー・各種検査法などがある。アセスメントを実施して、どのような手法を用いたら有効な手段になるかの仮説を立て、実践して、結果を評価して、再度また実践へとむかうこととなる。児童館・児童クラブにおいてコミュニティワークを考えてみるともっと身近なものがあるのではないかと私は考えている。私の勤務する有明児童センターは民間の社会福祉法人で経営している。社会福祉法人新潟市社会事業協会という法人である。関東大震災の時に東京から新潟に非難してきた人たちを受け入れるために当時の民生児童委員協議会(旧方面隊)の組織である。セツルメント事業もやっていた。現在では信楽園病院や特別養護老人ホーム・保育園等を経営している組織でその理念は「隣保相愛・相互扶助・地域と共に」である。地域福祉活動とは日本的に言えば隣保相愛・相互扶助の精神であると考えている。そして欧米と違うのはもっと身近でもっと相互が対等な関係ではないかと思う。

 もう一点考えてみたい。福祉は英語でWelfareである。Welfareはよりよく生きるとの意味である。財団法人児童健全育成財団の鈴木一光理事長さんはふくしだんのらしをあわせにと頭文字をとって話していられる。私はその通りだと思うのですが、しあわせの概念はその人によって漠然としているように思います。そこでわたしはふくしつうのくらしをっかりできることではないかと提案しています。つまりふつうのくらししっかりできるために個人として考えるのが個別援助活動・集団としてとらえると集団援助活動・地域としてとらえると地域福祉活動となるとおもうのです。このように考えると地域福祉活動もきわめて身近な活動を考えることができます。

(1)   身近な遊び場環境作りへの取り組み

 児童館・児童クラブの仕事の中に(7)家庭や地域での遊びの環境づくりへの支援が必要とされているが、その実際の展開過程について私の実践をもとに提案をしてみたい。

 私は子どもの健全育成に一番大切なことは子ども同士の切磋琢磨を保証することと安全で安心して遊べる遊び場環境を提供することであると考えている。よく子どもの遊び相手をすることが児童館児童クラブの職員の仕事と考えている人やたんに見守りや連絡帳を見ていれば良いと考えている人がいる。しかしながらそれだけでは健全育成が実現できないのではないかと感じている。積極的に子どもの遊び場を緑いっぱいの環境にすることが大切と考えている。

 私の職場の隣には有明保育園があります。広さが小学校のグランドの4分の1くらいの広さです。このグランドで子ども達がサッカーや手つなぎオニ・キックベースボールなどで遊ばせてもらっています。私の職場は5時半頃でも80人以上のクラブ員等の子ども達が遊んでいるので、このグランドを使わせてもらうことはとても助かります。《これとは別に私の自宅前に2千坪(小学校のグランドの3分の2くらいの大きさ)の平島公園があります。13年前までは汚い・臭い・ゴミだらけ・風が吹くと砂が飛ぶ公園でした。この公園の緑化活動を9年ほど続けた結果、平島公園は花と緑でいっぱいの公園になりました。砂だらけの公園は短いイネ科のシバ・コウライシバ・ノシバ・スズメノカタビラ・チドメグサ・クローバーなどですっかり緑になり、晴れた時は400名以上の子ども達で賑わっています。》

平島公園での経験を生かして、有明保育園も芝生化を図ろうと私は考えました。保育園の園長先生の許可を得て、4年前よりノシバやコウライシバなどを引き抜かないで、代わりに芝刈り機で刈るようにしました。次第に緑が多くなって4分の1くらいは緑になりました。そこでシバの種を緑で無い部分に植えてみました。2年前には半分以上がシバとノシバとコウライシバとクローバーで緑となりました。この時に気づいたことがあります。今まで夏など乾燥している時に風が吹くと砂が飛んできて、私の職場は戸を閉めないと砂だらけになっていました。夏の暑い時に戸を閉めてクーラーを入れる必要がありました。グランドが半分以上緑となるとまったく砂が飛んでこなくなりました。逆にきれいなマイナスイオンの空気が渡ってくるようになりました。

2年前までは私がボランティア的にやっていました。でも有明児童センターにもメリットがあるとわかったので、有明保育園のグランドの芝刈りを職員やボランティアさんにも協力してもらうことになりました。また昨年からは有明児童センターの周囲と有明保育園のグランドの全面的な芝生化に取り組みました。芝生は好日性の植物ですから、木々の剪定も必要となりました。高さ4m以上の樹木の枝おろしも始めました。子どもたちもボランティアさんも職員も保育園の保育士さんもみんなで協力して、日々環境整備を続けました。結果的に今では花と緑の環境が作れました。

4年前 ノシバなどを抜かないで芝刈り機で刈るようになる  主に私のボランティア

3年前 3分の1くらいが緑になり、砂が飛ばなくなってくる 保育士・ボランティア・子どもなど

2年前 2分の1くらいが緑となり、水はけがよくなり、きれいとなる 職員も動員

1年前 3分の2くらいが緑となり、木の剪定もする     保育園と児童センターの仕事として定着

現在  完全に芝生化が完成する         保育士・職員・ボランティア・子ども保護者で維持

この変容の中で子どもたちがなかなか親の迎えになっても帰らなくなりました。みんなときれいな場所で転げまわって遊ぶことが楽しいからです。有明児童センターは1日平均150人くらいの小学生で賑わっていますが、午後5時30分くらいでも100人位の子どもがいます。午後6時になって70人くらいになります。午後6時半で50人くらいいます。午後6時45分で30人くらいとなり、午後7時でやっと閉館となる感じです。

同じく私の職場は信楽園病院の跡地1千坪を管理しています。砂が飛ばないように砕石を敷き詰めてあったのですが、この場所に4年間かけてクローバーの種を撒いたり、雑草を引き抜いたりしました。4年間でクローバーでいっぱいとなり、オニヤンマが飛んできたり、蝶々が遊んだり、子ども達がアカツメクサの花の蜜を吸っています。子ども達はクローバー公園と命名して「クローバー公園へ遊びに行ったいいですか?」と楽しんでいます。

子どもが安心して遊べるように身近な場所の遊び場環境作りに努めることが実は児童クラブ児童館における子育て支援になると思います。そしてそれは同時にいろいろな仲間を巻き込んでいくことになりますから、身近な地域組織活動=コミュニティワークになると思います。児童館児童クラブにおける地域組織活動は身近な場所で身近なところから始めることが大切と思います。小さなことでも意識的に取り組んでいると大きな流れになることがあります。大きな流れにならなくても、少しでも遊び場環境が良くなれば位に考えることが良いのではないかと思います。

(2)マツバギクを増やす活動

 私の職場の近くに佐藤のおばあんちゃんが住んでいました。(2年前に93歳で他界されました)佐藤のおばあちゃんはマツバギクが好きで自宅の庭にマツバギクをきれいに咲かせていました。佐藤のおばあちゃんは有明児童センターの子どもたちが大好きで花が大好きでした。今から10年ほど前から自宅のマツバギクを有明児童センターに植える活動をしてくれていました。私も10年前からおばあちゃんと一緒にマツバギクを植える活動をしました。有明児童センターではたくさんの実習生を受けいれています。年間に20人ほどの実習生が来ます。この実習生と一緒に雑草を抜き、マツバギクを植える活動を始めました。少しづつマツバギクが増えていきました。3年ほど前からは児童センターのマツバギクも多くなり、有明福祉タウンや地域の人たちにもマツバギクを配れるようになりました。

 また通りがかりの人たちも「有明児童センターはいつもきれいでいいですね」と声をかけてくれるようになりました。雑草が減り、花が増えてくるとやぶ蚊が減ってきました。子どもたちも蚊に刺されることも少なくなってきました。

 マツバギクでも無くても良いでしょう。アサガオを増やしたり、コスモスをたくさん植えたりして、この種を収穫して児童クラブや児童館に来る子どもたちに配布して、花いっぱいの地域つくりをすればそれは立派な地域組織活動になるでしょう。地域組織活動やコミュニティワークの本などを読んでみますと難しいことがたくさん書いてあります。でも実践編となると案外この程度のことなのかと思うことが多々あるのです。問題は児童館・児童クラブの活動は間違いなく、地域や学校や近所の人と密接な関係があることをしっかりと自覚しておくことです。

 私自身もよく地域の方からクレームをもらうことがあります。新潟大学管弦楽団のコンサートの練習を夜にやっていて、「うるさい」との怒りの電話をもらったこともありました。そこで予め、練習は夜の8時までにする。近隣の人には招待状を配ったり、「夜8時まで練習をするのでよろしく」とのお願いに回ったり、クーラーの切り替えを早目にして、6月の第1土曜日にはクーラーが運転できるように手配しておくなどの対応をしました。もちろんまったくクレームが無くなったわけではないのですが、確実に減ってことはたしかです。

(3)個別援助活動と地域福祉活動

 地域組織活動=コミュニティワークを地域に対する身近な遊び場環境つくりへのアプローチと考える場合の提案をしてみた。今度は逆に個別援助活動を地域福祉活動との関係で考えてみたい。

 小学1年生で落ち着きがなく、ちょっとしたことで興奮して走り回ったり、嬌声をあげたりする。友達にちょっと馬鹿にされたと言ってはすぐに泣いたり、暴力を振るったりする子どもが増加してきている。このような子どもに対する対処の仕方はいろいろあるであろう。基本的には全職員が共通理解で「ダメなことはダメ」を通す。また不当な暴力行為は許さないなどのことが必要であると私は考えている。同時にこのような切れやすい子どもを裏で挑発して楽しんでいる子どもへの注意も必要である。また不当な暴力や言動は許さないけれど悪い子どもと決め付けないで、悪いことをした手や足を叱り、「でもあなたは良い子どもである」と言い続けることが必要であると私は思う。同時に作業等のお手伝いをさせて褒めてあげることが必要であると私は考えている。

具体的な事例

 小学校1年生女子児童Aちゃん 新1年生が40人ほどクラブ員として入会して活動を始めた。他の子ども達は同じ保育園から来ているので、比較的に仲が良い。Aちゃんは別の幼稚園から小学生となり、その幼稚園からはA小学校に行く子どもが少なく、児童館(児童クラブ併設)へもクラブ員としては2名しか在籍していない。学校でも幼稚園が一緒の子どもが少なく、泣いていることが多いという。これが挫折型不登校となり、学校に行けなくなるのは私の経験智から多いことである。

 放課後になると幼稚園が一緒の子どもと学校から児童館へ戻ってくる。児童館へ登館後は学習タイムとなるので、みんなと一緒に宿題をしたり、言葉遊びをしたりしているので問題がない。しかしながら、2年生や3年生の子どもたちも帰って来て、人数も140人くらいとなり、宿題も終わり、自由遊びとなると、みんなと一緒に遊べないために、お母さんが恋しくなって、泣き始めることが多くなってきた。

作業を通して元気になる働きかけ

 こうした場合に、一般的には「大丈夫。お母さんは必ず迎えに来るからね」などと声をかけてしまうことがありますが、ほとんど効果がありません。逆に思いがそっちにいってしまって、逆効果になることがあります。また、「みんなと遊ぼう」みたいな提案も受け付けてくれることがありません。一番大切なのは気分一効果の理論を使って、違った気分にさせることです。面白い・楽しい・おかしい・美味しいという気分と悲しい・苦しい・寂しいの気分は同居できないというのが、気分一効果の理論です。

 「Aちゃん。これから先生は折り紙作りをしなければならないのだけれど、手伝ってくれる」当然返事がありません。そこで「Aちゃんが手伝ってくれない。嫌だ。嫌だ。」などと大泣きをして見せます。大の大人が泣くのを見て、Aちゃんは思わず笑ってしまいます。この時にお母さんに会いたいとの寂しい気持ちは隠れてしまうのです。可笑しいことにもっていかなくても、美味しいことにもっていくこともあります。「実はチョー美味しいお菓子をもらってあるのだけれど食べる?」なんて言って、美味しいお菓子を出してあげれば、子どもは楽しくなってしまいます。ある意味では料亭政治みたいなのもこの一種なのでしょうが。

作業への展開

 気分一効果の手法を使って、元気になったあとに、遊びへと誘導することも出来ますが、児童館・児童クラブの職員は多忙です。それに特定のAちゃんとばかり遊んでいると他の子どもにねたまれるでしょう。そして、Aちゃんへのいじわるにつながるかもしれません。小学校低学年の時期に「いじめ・いじめ」と騒ぐのは間違いです。本来のいじめみたいなことは思春期へとの移行時期にあるものです。低学年時代のいじわるみたいなものはあります。そしてそれが根の深いものにしないように働きかけることは大切ですが、いじわるみたいなことを全面的に禁止するとかえって問題が深くなることが多いことを考えておく必要があります。そこで遊びへではなくて作業へと活動を持っていくことが必要であると思います。作業であるならば、特定の子どもの贔屓にならないし、児童館・児童クラブ職員として、子どもの見守りをしながら、工作等の準備活動もできるからです。ガードナーの多重知能理論によれば、人間の注意が出来ることは、論理数学的知能・身体運動的知能・空間把握知能・言語的知能・音楽芸術手知能・個人内知能・対人的知能の概ね7つの知能なのですが、この知能は連携しつつも基本的には独立していると考えられています。作業と遊びを見守ることは一緒に出来ますが、遊びながら見守ることは難しいのです。そのように思わないなら実際に子どもと本当に遊びながら、見守りが出来るか試してみることです。実際に指導員が遊ぶと身体運動的知能と空間把握知能を使わなければなりません。見守りは空間把握知能と論理数学的知能が必要です。ですから、空間手的握機能が一緒なので遊び相手と遊びの見守りは両立しなしにくいのです。作業は身体運動的知能と論理的知能が必要です。しかし、身体運動機能をオートマックにすることができれば、空間把握機能は別途に機能しますから、作業をオートマチックにすることが前提で、作業と見守りは一緒に出来ると私は思います。

Aちゃん。実はこの後、工作をするのに、折り紙を裁断したいのだけれど、手伝ってくれる」「何。手伝ってくれない。美味しいお菓子を食べたのに、手伝えない。ぎゃおーぎゃおー」なんて面白おかしくやれば、たいていの子どもは「手伝います」というものです。

 そこでコンビニからもらってきた長方形のチラシをカール(安全な裁断機)で正方形に裁断する作業を始めます。私はカールにy=−xの斜めの線を引いています。この斜めの線に角をあわせて、カールの紙押さえをとめます。そして手で押さえながらカッターを引くと10枚程度のチラシが正方形に裁断されます。

Aちゃん。このゴミをゴミ箱に捨ててちょうだい」「とても助かる」などといいながら作業をしています。もちろん作業をしている場所は児童クラブ室です。その場所ではオニムや人生ゲームやおうさま将棋・お絵かきなどで20人くらいの子どもが自由遊びをしていますので、職員はその子ども達にトラブルや危ない行為がないかを見守りながら作業をしています。(この時に他の子ども達は20人くらいの子どもは図書室で本を読んでいて、体育館では40人くらいの子どもが遊んでいて、ローラースケートをしている子どもが30人くらいいて、外遊びをしている子どももたくさんいます。職員はそれぞれ分散して自由遊びの見守りをしている状況です。)

 Aちゃんも自分でも裁断をしたくなってきます。そんな風に見えてきたら、「やってみる」と声かけをします。上手くできたら褒めたあげたりしていると、他の子どももやりたそうに見てきます。そこでカールをもう2台持ってきて「やりたい人はやらせてあげるよ」などと言うと他の子どもたちも喜んでやり始めます。

ケースワークからグループワークへ

 児童館・児童クラブの活動において大切なことは常にケースワークがグループワークへと発展していくことだと私は思っています。仮にケースワークを専門にやるとするならば、専門家として臨床心理学を学び、ある程度臨床心理のプロを目指すくらいの覚悟が必要であるでしょう。ケースワークとは問題行動を抱える相手をするわけですから、中途半端にはできないという覚悟が必要なのです。というのはケースワークのある意味の原則は人間の中にある魑魅魍魎まで引き出すわけですから、その魑魅魍魎と対決できる覚悟が無ければ、「ごめんなさい。私にはあなたの気持ちは理解できない」と正直に話すことが必要です。それが出来ない人が受容共感的態度で、なんでも解決できるかのような誤解はなくすべきです。このように考えてみると、作業療法や遊戯療法で、ある程度ケースワークが出来たとしても、それ以上の発展は、ケースワークではなくてグループワークにゆだねることが大切なのではないかと私は思います。自分が責任をもって出来ないならば、他の仲間に託すのが基本です。それが日本人の基本的な考え方ではないでしょうか。児童館・児童クラブの職員の力量を考えてみても、ケースワークに全部を託すのではなくて、ある時からグループワークに委ねることが現実的な手法であると私は感じています。

 具体的に展開から考えるならば、上記の長方形のチラシをみんなのために正方形に裁断するとの作業療法は、自由に遊んでいる子ども達の興味をひきつけて、作業活動がケースワーク的な活動からグループワーク的な活動へと変容させることによって、ケースワークの対象であったAちゃんの活動からみんなの活動へと変容していくのです。そしてその変容のプロセスは、Aちゃんと職員の関係からAちゃんを中心とした仲間作りへと発展していくのです。つまり、Aちゃん個人の作業が仲間全体の作業へと発展することになります。

 作業のグループワークから遊びのグループワークへ

 作業とは大人や指導員から与えられた課題もしくは生産的な課題を達成することであるかもしれません。それに対して遊びは必ずしも目的性のある活動ではないでしょう。ある意味では目的性の無い活動だからこそ、人間にとって必要なのかもしれません。児童館や児童クラブの職員にとって一番に必要なことは、作業的なグループワークから子ども同士の遊びへと無意識的な転換を意図的にすることではないかとも考えられます。

 長方形のチラシをカールを使って正方形に裁断する作業が次第に、仲間を巻き込んだグループワークになります。その後に「みんな頑張ってくれたね。ありがとう。お礼に折り紙を使って好きな折り紙を折っていいよ」との提案をします。そして折り紙の折り方の本などを自由にできるようにすれば、Aちゃんを含めて、自由遊びの和が広がっていくのです。この時にAちゃんを元気にしてくれたのは、作業を一緒にしてくれた子ども仲間であり、遊び仲間なのです。そして職員はあまり目にとまらないサポーターでしかないのです。つまり、児童館・児童クラブの職員は児童健全育成の主体ではなくて、あくまでもサポーターなのです。その立場を自覚しないで自分が主役になろうとすると厄介な問題が生じるのではないでしょうか。

 以上がケースワークからグループワークへの展開である。同時にコミュニティワーク的な考え方を導入してみよう。

 地域の中には当然、その子どもが以前に通っていた保育園や幼稚園があるわけだから、保育園や幼稚園でどのような様子であったかとか現在通っている学校の授業中の様子がどうであるかなどの情報交換することが必要となるであろう。またすぐに切れてしまう子どもには言語的な遅れがあり、それが他の子どもに馬鹿にされて切れる場合もある。ですからどもりとか言語障害がないかなどの専門的機関との連携も必要となる。また家庭環境との観点から、地域の民生児童委員や主任児童委員などとの連携が必要となる。

 児童館には運営員会の設置が求められている。運営委員会は保育園園長・小学校校長・中学校校長・主任児童委員・民生児童委員・所轄課・地元自治会・コミュニティ協議会・育成協議会・児童館ボランティア・ 有識者などで構成されている所以がそこにある。

 このように考えてみるとケースワークを上手く展開するためには地域福祉活動との関連を上手く使うことが有用であることがわかるのではなかろうか。

(4)身近な地域の活動に児童館や児童クラブで参加するのも地域福祉活動

 私の仲間の児童クラブでは地域の祭りに保護者と一緒に子ども達が参加しています。日曜日に祭りはあるのですが、勤務扱いとなり、地域の祭りにフリーマーケットやお店を出店したりしています。また子どもみこしなどを児童クラブで作成し、祭りの触れ太鼓と一緒に子ども達が回っています。

 こうした活動の結果、児童クラブは地域の中の大切な存在と認められて、地域の農家の人たちが花などを持参して植えてくれているとのことです。ですから、そのクラブの周りは花がいっぱいです。子ども達が喜ぶだけではなくて、地域のお年寄りなども散歩がてら花を楽しんでいます。

 一般的に一つの組織で活動をするよりも二つ三つ四つの組織が協力して活動すると、活動の巾が広がりますし、楽しさも増します。そして何よりも労力が2分の1・3分の1になっていきます。地域福祉活動とはそのようなものだと私は思っています。本来的に地域福祉活動とはいろいろな組織のよさを上手く使い、労力を減らし、成果を増やすためにあるのですが、それが上手くいかないことがあります。逆に労力が増えて、労力の割りに成果がないことがあります。この問題について考えてみたいと思います。

 基本的にそれぞれの組織の良さを活かせば良いのに活かせないのは、仕切り屋や評論家などが多すぎることにあると思います。祭りなどでテントを立てる場合で考えてみましょう。基本的にはテントを立てるのが上手い人からみんなが黙って学んでしっかりその指示に従えば良いのです。ところが実行委員長とか役員とかいう人たちがみんな自分が仕切りたがったり、動かないのに評論をする人が出たりします。

 6本足の2間×3間のテントは最低2人・少なくとも3人のテントを立てるのが上手い人がいれば、簡単に立てることができます。ところが10人も一つのテントに取り掛かって、ああでもないこうでもないと言い始めるとテントを時間ばかりかかって、時には怪我をする人まで出る始末となります。このように考えてみるといろいろな組織が活動をする時はそれぞれの組織の特性を上手く活かして、その助け合いを上手くやることが必要であると思います。そして、その場合に良くわからない人は黙ってエポケーして学ぶことが必要であると私は思うのです。エポケーと言うのはとりあえず郷に入ったら郷に従うとのことです。下手な考えをしないでみんなと同じようにしてみることです。こうした態度がないと複数の組織が上手く助け合って活動をするのは難しいものです。互いの組織の特性を尊重しあって、その上で助け合えるものがないかを探る過程はある意味では互いが手探りで実践をしながら、互いの共通理解を図る過程ではないかと私は思います。


5、児童館・児童クラブの特性と地域福祉活動

地域福祉活動においてはそれぞれの組織の特性を活かした組織間の上手い連携が大切であろう。それでは児童館・児童クラブの特性とはなんであろうか。

(1)   児童館・児童クラブにはたくさんの子ども達がいる。自由な活動ができる。

 一部そうではない児童館もありますが、一般的に児童館や児童クラブにはたくさんの小学生や子どもがいることが特徴です。一定の場所に多数の子どもがいるだけでそれは特性となることができます。しかも学校との違いを考えてみますと児童館や児童クラブには大きな特性があります。小学校にはたしかにたくさんの子どもがいますが、活動内容は何をするかが細かく決められています。国語算数理科社会音楽体育図画工作道徳学活などとやるべきことが学習指導要領できめ細かく決められています。ですから、小学校では子どもがたくさんいて、時間はたくさんありますが、自由な時間はとても少ないのです。ところが児童館児童クラブにおいては、活動内容はきわめて大雑把ですし、絶対にこれはやらなければならないという規制はないのです。児童クラブにおいて出席簿を付けることくらいでしょう。ですから祭りの踊りの練習をしたいところがあれば祭り練習をすればよいし、将棋をやりたければやればよいのです。

 有明児童センターでは夏休み中は毎日170人くらいの小学生がやってきています。夏休み前半の7月いっぱいはプールに行っています。8月上旬は工作やオニム・どうぶつしょうぎなどです。お盆前からは有明ふれあい夏まつりに向けてジンギスカンなどのダンスの練習が主となります。夏休み後半は料理教室などをやっています。どの活動も必ず児童クラブや児童館でやらなければならない規制があるわけではないので、地域の実情にあわせていろいろな活動ができることになります。小学生がたくせん居て、何をやっても良いというのは児童館児童クラブの特性であると言えるでしょう。

(2)   子どもには親がいる。

 子どもがたくさん居るということはその両親がまたたくさん居ることでもあります。例えば40人の児童クラブだとするならば、概ね100人近くの保護者や祖父母等がそのクラブに関わっています。100人の大人が居るということは失業している人が4人くらいいて、仕事をしている人が96人いることになります。失業して失業手当をもらっている間、児童館児童クラブの子ども見守りVoや草取りVo などをお願いすることも出来るでしょう。働いている人もたくさん居るわけですから、その仕事に応じて手伝ってもらうことも出来ます。

 有明児童センターの保護者を考えてみただけで、医師・教員・トラック運転手・タクシー運転手・事務員・銀行員・裁判所職員・弁護士・自営業・喫茶店経営・看護師・美容師・印刷会社員・宅急便勤務などなどいろいろな職種の方々がいます。

 いろいろな職種があれば、いろいろな職場で不用となったものが出ることがあります。例えばコンビニでは宣伝期間の過ぎたチラシが大量に出ます。これは折り紙になります。印刷会社で印刷ミスの紙が大量に出ることもあります。お菓子問屋で賞味期限の近づいたお菓子が大量にあることもあります。喫茶店のコーヒーを出した後の豆は畑の肥料になります。このように考えてみると毎日子どもがたくさん遊びに来て、その保護者が毎日たくさん迎えに来る児童クラブや児童館は物や人の情報交換基地であるとも言えるでしょう。自衛隊の広報部に勤務されている方から電話があったことがあります。「中越地震の時に自衛隊員にがんばってとインスタントラーメンのたくさんの寄贈があった。しかしながら食べきれないで賞味期限が近づいている。もらってもらえないか」との電話があった。「頂きます」と返事をしたら、24ヶ入りの箱が15箱届きました。150人の子どものおやつに使い、ボランティアさんや保護者や近隣のお手伝いをしてくださる方に趣旨をお話して1日でみんな配り終えました。賞味期限まで1週間でした。

 このようにたくさんの人が一緒の場所にいることは大きな価値であることを知っておくことが必要です。地域福祉活動というと難しく考えてしまいがちですが、そんなに難しいことではないと私は思います。

 子どもと親がたくさんいれば、当然自宅で不要となる品物もたくさんあることになる。だとするならば、適時、フリーマーケットとか不用品寄付などを受け付けて、それを必要な人に届くような活動をすれば、地域の中でエコサイクルの運動をすることになる。子どもが大きくなって要らなくなった服や中学生となり要らない絵本などを下の子どもへと提供するなどの活動は児童館児童クラブでは簡単にできることではないだろうか。そしてその売上金等で必要な備品などをそろえていけば一石二鳥のかつどうになるであろう。

 たくさんの子どもや親が居ると言うことは同時にいろいろなふれあいが出来ることでもある。

 男の子ども3人のお母さんの子育ては大変である。アグレッシブすぎる子どもの子育てで疲れはてているお母さんもいる。このようなお母さんにも同様な経験をしている先輩お母さんとの話をする機会があればずいぶんと楽になるものだ。ですか児童館児童クラブはお母さんたちや親たちのふれあいの場所でもあると考えても良いのではないかと私は思います。そしてだべりながらもおやつくばりなどのお手伝いをさせることも必要と思います。

(3)   児童館児童クラブは異年齢集団である。

児童館や児童クラブは小学校のように同一年齢集団ではなくて基本的に異年齢集団である。しかも小学校1年生と小学校6年生では大きな違いがある。小学校1年生の平均身長は116センチ体重21.5キログラムくらいである。小学校6年生身長は146センチ体重39キログラムである。また法的に小学校1年生はまだまだ事理弁識能力が不十分であるのに対して、小学校6年生は責任弁識能力も確立しなければいけない段階でもある。このような異年齢集団を同時に相手にすることはとても大変である。したがって作業や遊びやお手伝いにおいてもユニバーサルデザイン的な手法を用いることが必要である。例えば折り紙においてはもやっとボール折り紙のように簡単に誰でも単一ユニット折り紙はおれるけれど、学年に応じてとても高次なものに出来るようなものにすることが大切である。

遊具でもカプラ・ドミノ・ワミーなど保育園児でも出来る遊びであるが、小学校低学年・高学年・大人までが楽しめるものであることが望ましい。つまり児童館児童クラブにおける遊びはユニバーサルデザイン的な遊びや遊具が大切である。

ユニバーサルデザイン的な遊びや遊具や手法を開発することが児童館児童クラブのある意味では職員の腕の見せ所ではないだろうか。そしてユニバーサルデザイン的な遊びや遊具や手法をたくさん持っていることは、保育園や地域やお年寄りなどとのふれあいの遊びや遊具や手法をたくさん持っていることである。つまり、地域の福祉活動等で大きな貢献が出来る要素があるとのことになる。

上記のように子どもがたくさん居て、自由な活動ができる・児童館児童クラブには保護者等もたくさんやってくる・児童館児童クラブは異年齢集団なのでユニバーサルデザイン的な手法が求められているなどの特性がある。この特性を活かせば、他の福祉施設等よりは地域福祉の貢献できるように思う。

問題は地域福祉やコミュニティワーク・集団援助活動とグループワーク・個別援助活動とケースワークなどの活動を難しく考えないことである。そして地域やクラブやグループなどの子ども達がふつうのくらしがしっかり出来るようにするためには(=自分の子どもならばどんな風に生きて欲しいか)何が必要かを仲間と共に考えるという目的性と手法を自覚することにあると私は考えている。

 児童館児童クラブとの職場の特性を活かして、有意義な仕事を子ども達と共にやりたいと私は思っています。