「パパ〜、ここ連れてって〜」
娘は和樹さんの所に行くと抱き付きながら言う。
ある写真を持って・・・
「ん、なんだ急に?どれどれ・・・」
娘から写真を受け取ると、それを見つめる和樹さん・・・
和樹さんは、どう思うのだろう・・・あの写真には・・・あの写真には私達が初めて出会った場所が写っている・・・
初めて出会った場所・・・こみっくパーティの場所が・・・
あそこには、さまざな思い出がある・・・楽しかった事・・・嬉しかった事・・・
そして・・・悲しかった事・・・
そんな思い出が沢山あった場所・・・
「あさひ・・・この写真って・・・」
その言葉に私はビクつく・・・和樹さんに嫌な思い出を思い出させてしまったかもしれないと・・・
「こみパ会場だよな」
更に和樹さんは続ける・・・
「懐かしいな・・・あの頃の出来事が・・・思い出が・・・」
意外な言葉だった・・・和樹さんが、そんな事を言うのが・・・
和樹さんは思い出したくないと思っていた・・・あの出来事を・・・
私の為に・・・私の為に何もかも捨てて逃げた出来事を・・・
今も後悔しているかもしれないと思っていた・・・
あんな事さえなければ、和樹さんは もっと有名になれていたはずだから・・・
プロの漫画家になって、もっと・・・もっと有名になれていたはずだから・・・
「あ、あの・・・後悔していませんか・・・漫画家の道を捨てた事に・・・私を選んだ事に・・・」
知らず知らずに、そう聞いていた。
和樹さんの気持ちは、既に知っていると分かっていたはずなのに・・・
私と同じ想いを持っていると知っているはずなのに・・・
和樹さんの瞳が私を見つめる・・・私の瞳も和樹さんを見つめる・・・
それだけでも私達の想いは伝わり合っていた。
和樹さんが何を言いたいのか・・・
(ありがとう・・・和樹さん・・・私を選んでくれて・・・)
私と和樹さんの間に、そんな言葉はいらない・・・私達の想いは いつだって繋がっているのだから・・・
「パパ〜?ママ〜?」
私達のやり取りを娘は不思議そうに尋ねる。
そんな娘に和樹さんは笑顔で頭を撫でる。
「じゃぁ、3人で行ってみるかっ」
その言葉に嬉しかった・・・また・・・また あの場所に行ける・・・
和樹さんとの思い出の詰まった場所へ・・・
あの時は2人でも、今度は3人で・・・
そして、また新しい思い出が出来る事だろう・・・
楽しい思い出が・・・幸せな思い出が・・・
きっと・・・沢山・・・