あの日の出来事から、私は抜け殻の様な日々を送っていた・・・

仕事でも、失敗に失敗を重ねる毎日が続く・・・

 「あさひちゃん・・・一体どうしたの?最近、なんか変よ」

マネージャーからの言葉にも私は、ただ一言だけ

 「な、なんでも・・・ありません・・・」

その一言だけで黙り込んでしまう。

仕事中は、しっかりしないといけないというのに・・・

まだ、和樹さんの事で悩んでいる私・・・

自分でも早く忘れなければならいと誓ったはずなのに・・・

いつまでも・・・いつまでも、引きずっているなんて・・・

和樹さんに迷惑がかかるって思っているのに・・・

でも、忘れる事が出来ない・・・

いつの間にか、そこまで和樹さんの事を好きになっていた。

例え、和樹さんに相応しくないと分かっていても・・・

 

それからの私は今まで以上に仕事に打ち込んむ様になった。

和樹さんの事を忘れる為に・・・そうしていないと、私が私でいられなくなるから・・・

 「あさひちゃん、お疲れ。今、あさひちゃんを訪ねてきている娘がいるのだけど」

マネージャーの言葉に私は首を傾げる。

誰だろう?

わざわざ訪ねてくるのは珍しかった。

 「は、はい。い、今から行ってみます」

そう言い残すと私は、その場所へと向かう。

私を訪ねてきている娘が待つ場所へと・・・

 

 「えっと、あなたが 桜井さんよね?」

私がキョロキョロと探していると、後ろから声が掛けられる。

私は振り向き・・・そして驚く。

あの日、和樹さんの部屋に居た女(ひと)なのだから・・・

どうして・・・和樹さんの彼女がここに・・・

私は、すぐにでも逃げたくなった。

会いたくなかった・・・とても辛いから・・・

 「ごめんね。いきなり訪ねて来りして」

とても綺麗な女(ひと)で、どことなく好感の持てる女(ひと)・・・

この女(ひと)なら和樹さんに似合うだろう・・・

 「い、いえ・・・そんな・・・」

とても緊張していた・・・初めて話すのだから・・・

 「私は高瀬 瑞希っていうの。今日訪ねて来たのは訳があって・・・」

とても深刻そうだった。

わざわざ、私の所に来るのだから よっぽどの事だろう・・・

 「和樹の事なんだけど・・・桜井さんは何か勘違いしているのだけど」

 「か、勘違いですか?」

高瀬さんの言葉に私は聞き返していた。

勘違いとは・・・いったい・・・

やはり、私は・・・和樹さんに迷惑をかけていたのだろう・・・

だから、わざわざ・・・

 「そう・・・私は和樹とは、何も関係ないのよ。あいつとは、ただの幼馴染」

意外な言葉だった・・・高瀬さんが ただの幼馴染!?

じゃぁ・・・私の勘違い!?

 「あ、あの・・・ほ、本当なんですか?」

まだ、信じられないくらいで聞き返した。

 「そう、だから安心していいよ」

その言葉を聞いて安心する私・・・

そして、心配してくれた高瀬さんに感謝したかった。

私の・・・あの日の行動で、わざわざ心配して訪ねて来てくれたのだから・・・

 「わ、わざわざ・・・す、すみませんでした・・・」

 「ううん・・・私が、あんな所にいたんだもん誤解して当たり前よ」

 「ただ、和樹のヤツ・・・心配しているのよ。オレが何か嫌われる事をしでかしたんじゃないかって」

やっぱり、和樹さんは心配しているみたいだった・・・私が あんな行動をとったのだから・・・

私の勘違いな行動が、こんなにも迷惑をかけていた・・・

 「だから、桜井さん・・・あいつを慰めてやって欲しいの。今のあいつ、抜け殻状態でマンガを描かないのよ」

なんて事だろう・・・和樹さんが・・・私の事をそんなに・・・

和樹さんも私の事を・・・

私は知らず知らずのうちに涙が溢れていた。

そうとも知らずに私は勘違いをして・・・でも、嬉しかった・・・まだ、好きでいてもいいのだから・・・

 「桜井さん、あいつの事お願いね。いろいろと苦労すると思うけど」

そう付け加えると高瀬さんは笑顔で去っていった。

高瀬さんの親切な配慮に何とも言えなかった。

ただ心の中で

 (ありがとうございます)

と一言だけ・・・

 

今からでも遅くない・・・すぐにでも和樹さんに電話しよう・・・

私の気持ちと和樹さんの気持ちが繋がっていると分かったのだから・・・

今、ここではっきりと言える・・・

 

私は和樹さんの事が大好き

 

だと・・・いっしょにいたいと・・・

これからは、ずっといっしょに・・・