チュンチュン・・・チュンチュン

小鳥のさえずりと共に私は目を覚ます。

 「う〜ん・・・いい朝」

私は背伸びをしながら呟く。

今日は久し振りの休日。

忙しい毎日で最近、疲れていた。

そんな私を見てマネージャーが今日1日、休みを取ってくれた。

 「折角の休みだし、今日は和樹さんの所に行ってみようかな」

着替えを済ませ、朝食を取りながら独り言を言う。

 「突然来たら、和樹さん驚くかなぁ」

連絡もしないで、突然訪ねるのだから驚く事だろう。

でも・・・もしかしたら、留守かもしれない・・・

 「ふぅ、考えてもしょうがないよね・・・」

そう・・・思っているだけでは、何にもならない・・・行動しなくては・・・

決心を新たに私は、和樹さんの所に行く事にした。

 

 「和樹さん・・・居るかなぁ・・・」

マンションの前で、私は呟く。

出る時に、決心しても いざ来ると決心が鈍る・・・

何度も悩み・・・何度も和樹さんの部屋を見つめる・・・

時間は、刻一刻と流れていく・・・

 (ダメよっ、あさひ!!そんな事では・・・)

そう心にとめて、階段を上りだす。

静かに・・・ゆっくりと・・・

和樹さんの部屋へと近づく度に心臓が早くなる・・・

 

 ドキンッ・・・ドキンッ・・・

 

和樹さんの部屋の前に着いた時には、心臓が破裂しそうだった。

一呼吸し、緊張の面持ちでブザーを鳴らす。

果たして、和樹さんは居るのか・・・

居て欲しい・・・

 

 ガチャ

 

そんな思いで待っていると、ドアが開く。

私は、俯いていたが確信した。

和樹さんは部屋にいたのだから・・・

嬉しさがいっきに膨れ上がる。

 「あれ?あさひちゃん」

聞き覚えのある声。

私の好きな声。

聞きたかった・・・電話ではなく直接・・・それを今、聞く事が出来た。

あまりの嬉しさに、私の声は震える。

 「あ・・・え、えっと・・・え〜と、その・・・」

上手く喋れない・・・

他の人以上に、和樹さんの前では緊張してしまう。

そんな私の姿を見て

 「今日は、どうしたんだい?休み?」

と尋ねてくる。

私は、顔を上げる。

上げた先・・・私の見つめる先には、和樹さんの笑顔があった。

私の顔が、瞬く間に熱くなる。

 「あ・・・その・・・は、はい。き、今日はお休みですので・・・」

自分でも分からない事を喋っていた。

 「ご、ごめんなさい・・・と・・・突然・・・お邪魔・・・」

私が必死で話していると、見なれない女(ひと)が姿を現す。

 「和樹。誰なの?」

綺麗な女(ひと)だった・・・

和樹さんの彼女なのか・・・

きっと、そうに違いない・・・

和樹さんには・・・私なんか相応しくない・・・まともに話せない私なんか・・・

私は飛び出していた・・・何も考えず・・・

後ろから、和樹さんが何か言っていたが私には聞こえなかった・・・

いや・・・聞かなかった・・・

私の耳には「瑞希・・・」としか聞こえていない・・・

 (私って、なんだったのだろう・・・勘違いして・・・馬鹿みたい・・・)

自分の勝手な思い込み・・・今まで、私は和樹さんに迷惑をかけていたに違いない・・・

なんて、馬鹿だったのだろう・・・

必死で言葉にならない言葉で、和樹さんとお話して・・・同人誌を読ませてもらって・・・

 (もう・・・やめよう・・・和樹さんに会うのは・・・迷惑なはずだから・・・)

いつの間にか降っていた雨の中を私は歩き続け、そう思う・・・

 

ずっと・・・ずっと・・・