「日本一の千紗太郎」


ナレーション:桜井あさひ嬢
むか〜しむかしあるところにそれはそれは同人誌即売会がさかんな国があったそうです。
そんな国のある村に牧村南お姉さんが住んでいました。
ある日のことです。
南お姉さんがいつものように川で洗濯をしていると、上流の方から大きなモモがどんぶらこ
どんぶらこ、と流れてきました。

「あら大きなモモだこと、持って帰ってご近所におすそ分けしましょうか。
 どっこいっしょ! あ、あらあら、きゃ〜〜〜!!」

ドッボーーーーン!!

モモを拾おうとした南お姉さんですがモモの重さに引っ張られ川に落ちてしまいました。
でもそこは南さん!
根性でなんとか海に流れ着く前にモモと一緒に陸に這い上がることができました。

「でも困りましたね。このモモをどうやって家まで運びましょうか?う〜〜〜〜ん?
あっ!!そうですわ、運送屋さんにお願いしましょう。」
プルルルルルル…
「あっもしもし、はい、そうなんです。はい、はい、それじゃあお願いします。」
「ちわ〜〜!!お荷物はこちらですね。たしかにお預かりしました!」

そんなこんなでモモを家まで運んだ南さん、早速ご近所におすそ分けをしようと、
モモに包丁をいれたところ、なんとモモの中からかわいらしい赤ん坊が出てきたじゃありませんか!
その赤ん坊をみて南お姉さん、少し驚いた様子ですが、

「あらあら、モモの中から赤ちゃんが…それじゃあ千紗太郎と名付けましょうか。」

となんの脈絡もなく、しかも女の子なのに千紗太郎と名付けてしまいました。
それから千紗太郎は南お姉さんの家でこの国名産の良質の同人誌をたくさん読んで、
それはそれは明るく優しい子に育っていきました。
でもその幸せも長くは続きませんでした。

「ごめんなさいね、千紗太郎。今月も再版本を一冊しか買えなかったの。」
「南お姉さん、お家お金無くてきゅうきゅうしてるんですか?
 千紗なにかお手伝いできないですか?」
「いえ、そういうわけじゃないんですよ。実はね…」

なんでも南お姉さんの話によると最近、同人誌即売会会場にオニが現れて同人誌を
全て買い占めていってるそうです。
もちろんスタッフもオニに立ち向かいましたがオニ達は以上に強くまったく歯がたちませんでした。
それで人々はオニ達がわずかに残していった再版本しか買うことができなかったのです。

「それは悪いオニさん達ですね。千紗が注意してきますです!」

というわけで千紗太郎は南お姉さんの作ってくれたキビダンゴを持って、
単身鬼が島に向かうことになりました。
千紗太郎が鬼が島に向かって歩いていると道に一匹のイヌが座っていました。

「こんにちはです。イヌお兄さん☆こんなところでなにしているですか?」
「あっ…千紗太郎さんじゃないですか。実はお腹が減って動けないのです。」
「それなら千紗がキビダンゴを持ってますですから食べてくださいです☆」

そう言うと千紗太郎はイヌお兄さんにキビダンゴを差し出しました。

「ありがとうございます、千紗太郎さん。今日から私はあなたのイヌです。
 どうかお供にくわえてください!」

ちょっと表現があぶなかったですが、こうしてイヌお兄さんは千紗太郎と一緒に、
鬼が島に向かうことになりました。
そしてまたしばらく歩いているとなにやら遠くで大騒ぎをしているサルを見つけました。

「ちょう、ちょう、ちょうむかつく〜!!なんで私がサルなのよ!!
 同人クイーンの私は主役に決まってるでしょ!!責任者出てきなさいよ!!」

と誰に向かっていっているのかよくわかりませんでしたけど、とりあえず千紗太郎は
そのサルに話し掛けてみました。

「詠美ザルさん、いったいどうしたんですか?」
「あ〜!!あんた、あんた、あんたそれはあたしがやるはずの役だったんだからね!!」
「千紗なんのことだかわからないですよ?おかしなおサルさんですね☆」
「まっ、しょーがないわね、ここで出番がなくなるのもなんだし一緒についてったげるわよ!!
 感謝しなさいよね。この私と旅ができるんだからね!」
「はい、ありがとうございますです☆千紗感謝しますです。じゃあこれキビダンゴですぅ!」

無事詠美ザルもお供に加わった一行はまた鬼が島めざして歩き始めました。
さて鬼が島まであと一息といったところでふと千紗太郎に袖を引っ張るような感じが…

クイッ、クイッ! クイッ、クイッ!

振り返ってみるとそこにはいつの間にやら彩キジの姿がありました。

「こんにちはです、彩キジさん。なにかご用ですか?」
「……………………」
「ひょっとしてキビダンゴが欲しいですか?」
コクッ…

そして千紗太郎からキビダンゴをもらった彩キジはキビダンゴを
おいしそうに(多分)食べるとなにも言わず千紗太郎の後についていきました。
どうやらお供になってくれたみたいです。
こうしてイヌ・サル・キジをお供に加えた千紗太郎はとうとう鬼が島に到着しました。
さっそく鬼が島に乗りこんだ千紗太郎一行の前に鬼の大将が姿をあらわしました。

「ふはははははは、よくぞここまで来た千紗太郎!敵ながらあっぱれ!!」
「鬼さん、同人誌の買占めはいけないことですよ!もうやめてくださいですぅ!!」
「千紗太郎、吾輩はただ大宇宙の法則にしたがって事をおこしただけなのだよ。」
「大宇宙の法則ってなんですか?千紗には難しいですよ。」
「ふっ、やはり無知な者には吾輩の考えが理解できんか…しかたあるまい、
 お前達この者どもを始末せい!」

大志オニの命令とともに二匹のオニが現れました。

「まあ、うちにまかせとき!」
「ふん!!」

その二匹のオニは大志オニ軍団でも最強と噂される由宇オニと立川オニでした。
とてもじゃありませんが千紗太郎達では勝てる相手ではありません。

「にゃあ!あのオニさんとっても強そうです〜。千紗怖いですぅ。」
「あっ!いまちょ〜いい考え思いついちゃった。私ってばやっぱり天才かも!」
「えっ?いったいどうするですか?」
「こ〜するの、えいっ!!」

ドン!!

「こらっ!!詠美いきなり押すんじゃねーよ!!って、あれ……」
「ほ〜う、このイヌさんがうちらの相手をしてくれるんか?ええ度胸やな!」
「その男気だけは認めてやろう!」

ウギャ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!

「さっ、今のうちに大志オニのところに行くわよ!」
「お兄さん、頑張ってくださいです☆」
「……………」

こうして無事?通過できた一行は再び大志オニの元にたどりつきました。

「大志オニさん、いいかげん観念するですよ!」
「ふん!あの二人を突破するとはさすがは千紗太郎!だが貴様らの命運もこれまで!
 いでよ、我が右腕、瑞希オニ!!」

そう大志オニ言うと、岩場の影からサイドポニーのいかにもスポーツタイプのオニが現れました。
そして、そのオニは姿を現すと同時にきつーい一撃を放ちました。

パッカーーーーーーーーーーーーン!!!!

「あうっち!!いきなりなにをするのだ、マイシスター!!」
「もうこれ以上あんたに付き合ってられないわよ!
 いいかげん人様に迷惑をかけるのはやめなさいよね!!まったくもう!」
「ぬぅ、吾輩を裏切るというのか!それなら容赦はしないぞ!マイ同士!」
「だから同士じゃな〜〜〜い!!」

そんなこんなでとうとう大志オニと瑞希オニのタイマンが始まりました。
実力はほぼ互角!…いえ、人間離れして動きの分だけ大志オニが有利でしょうか?
じょじょに瑞希オニが押されてきています。

「にゃあぁ!!瑞希オニさんがピンチですぅ!千紗どうすればいいですか?」
クイッ、クイッ!
「彩キジさんどうしましたですか?」
「…………………」
「えっ、この同人誌を大志オニさんに投げればいいんですか?」
コクッ!!
「なんだかよくわかりませんけどやってみますです。えいっ☆」

パサッ

「おお、あれは吾輩でも持っていない大庭詠美初期のコピー本ではないかぁ!!!!」
「スキありっ!!」

ばちこ〜〜〜ん!!!!

大志オニが一瞬の隙をみせたところに、瑞希オニの会心の一撃がHITしました!!

「ぐぅ、む、むねん………」
「ふぅ、やれやれ。」
「やったですー!!大志オニさんをやっつけたです〜!!」
「まあ、この私がいたんだからちょ〜当然って感じよね!」
「…………………」

こうして大志オニを退治した千紗太郎一行のおかげで同人誌即売会にまた平和がおとずれ、
良質な同人誌がまた世の中に出回っていきましたとさ。
めでたし、めでたし!!

えっ、千紗太郎はどこで活躍したかですか?……それはまた別のお話で……