ここは宇宙に浮かぶエンジェルベース。
今日もここで新たな騒動が起ころうとしていた。
それはウォルコット中佐の一言から始まった。
「合同訓練?」
ミルフィーユ・蘭花・ミント・フォルテは声を合わせて聞き返した。
ヴァニラのみは、あいかわらずの無表情である。
「う〜ん、合同訓練といっても皆さんは指導の立場なんですけどね」
ウォルコットが物腰やわらかに話しを続ける。
「皆さんは、こみレンジャーというのを知ってますか?」
「こみレンジャー?なんだい、そりゃ」
答えたのはフォルテだった。
他のメンバーもわからないといった顔だった。
「こみレンジャーとは、前回の『腹白い姉妹事件』を教訓にこみパ運営委員会が独自に設立した防衛部隊のことです」
「で、そのこみレンジャーが何で私たちと合同訓練をすることになったの?」
蘭花の質問にウォルコットが話しを続けた。
「それは結成されて間もない部隊ですから、委員会の方からいろいろ教えて欲しいということでして…」
「それで、その合同訓練はいつなんですか?」
「はぁ、それが今日です」
「えっ!?」
一同、ビックリ。
「っていうか、もう来ちゃっているんですけどね」
ウォルコット中佐はそう言うとパチンと指をならした。
すると後ろのドアが開き、こみレンジャーのメンバー入ってきた。
「こみパを破壊しようとする悪を阻止するために正義の力が今ここに大集結!!リーダーの御影すばるですの!!」
「まっ、今日はよろしゅうな〜☆」
「すげーっ、宇宙基地なんてはじめてだぜ」
「ふみゅ〜、明日、テストなのに〜」
「私、こみレンジャーなんてやらないんだからね、帰る帰る帰る帰る帰る〜!!」
「みなさん、ちゃんと予定どうりきめ台詞&ポーズを取って欲しいですのー!!」
こみレンジャーのメンバーは早くも騒がしかった。
「そして、我輩がこみレンジャー参謀の九品仏大志である」
「え〜と、軽く説明しますと、『こみパレッド:御影すばる』『こみパブルー:千堂和樹』『こみパイエロー:猪名川由宇』『こみパグリーン:大庭詠美』『こみパボイン:高瀬瑞希』だそうです」
ウォルコットが補足説明をした。
「あはは…」
エンジェル隊のみんなはただ笑うしかなかった。
かくして合同訓練は始まるのであった。

第一訓練『射撃訓練(教官:フォルテ)』
「それじゃあ、まずは射撃訓練をおこなう。各自、好きな銃を手にとって」
フォルテがそういいながら、すばるたちの前に大量の銃を置いた。
「あの〜、その前に質問というか……」
瑞希がおずおずと手をあげる。
「何?」
「射撃訓練って言っても、日本じゃ銃刀法違反になるから実戦する機会がないと思うんですけど…」
そんな瑞希に反論したのは大志だった。
「大ばか者!!禁愚ジャッキーの事件を忘れたのか!!あのとき、爆発の危機が救われたのもオタクの知識のたまものであろうが!!」
大志は一息いれると、ビシッと瑞希を指差し話しを続けた。
「今回の射撃訓練もいつしか知識としても役にたつときがくるであろう」
「そ、そういうものなの?」
大志の迫力に瑞希は少しおされ気味になった。
そんな2人の間にフォルテが割りいってきた。
「まあまあ、あんたもそんなに深く考えない。銃を撃てる機会なんてそうないんだろう?」
「それはそうですけど…」
「それなら、せっかくだから体験しておいて損はないはずさ。ほら、あんたの仲間たちはやる気満々だよ」
そう言ってフォルテが指さした先には我先に銃に群がるすばるたちの姿があった。
「やっぱ銃っていったら、ワルサーP38やろ♪」
「あーっ、パンダ!!それ私が狙ってた銃なんだから〜!!」
「ぱぎゅ〜、5つの武器が合体してできる銃はないんですの〜?」
みんな楽しそうに銃を選んでいる。
「よ〜し、それじゃあ的に向かって撃ってみな」
「ほな、軽くいこか」
由宇が狙いを定めて、そして一気に連射した。
弾は見事すべて的の中央にHITした。
それにはフォルテも驚いた。
「あんた、やるじゃないか」
「まあ、昔、地元の射的でちょっち鍛えたからなぁ」
そんな会話を交わすフォルテと由宇の横で詠美も銃を構える。
が、なれない銃を扱うせいか手元がふらふらして定まらない。
「ふみゅ!!」
チュイン!!
弾は由宇の頬をかすめた。
「詠美!!なにしてんねん!!」
「し、仕方ないでしょう。銃なんて撃つの初めてなんだから」
そう言いつつ、詠美は再度銃を撃った。
チュイン!!
またまた弾は由宇の頬をかすめた。
「詠美〜、ひょっとしてうちのころ狙てるんか?」
由宇がハリセンを片手に詠美ににじりよる。
「ふ、ふみゅ〜ん」
そこへどこからともなく騒がしい声が聞こえてきた。
「ぱぎゅう〜、止まりませんの〜!!」
見ると、すばるが巨大なマシンガンを乱射しながら走ってくる。
「ぱぎゅ〜、1番大きい銃を選んだら止まらなくなっちゃいましたですの〜!!」
みんな、すばるのマシンガン乱射から逃げ惑う。
それはあたかも阿鼻叫喚地獄絵図のようだった。
それをミントと瑞希は安全な場所でぼーぜんと見ていた。
「ねぇ、死人が出る前に次の訓練に移った方がいいんじゃない?」
「わたくしもそう思いますわ………」

第二訓練『格闘訓練(教官:蘭花)』
「次は、実質的にこみパ防衛でもっとも大切と思える格闘の訓練よ」
蘭花が軽く手をポキポキならして前に出てきた。
「訓練形式はなんでもありの組み手方式。誰でもいいからかかってきなさい」
「ほな、うちが最初にいこうか」
名乗りをあげたのは由宇だった。
「うっ…」
蘭花が一瞬とまどう。
かつて蘭花は由宇との勝負に敗北寸前まで追いこまれたことがあったのだ。
(ギャラクシーパーティー1を参照)
「あの時の決着、いまつけようか」
由宇が構えをとる。
「のぞむところよ!!」
蘭花も気を取り直して構えをとる。
数分後………地面に倒れた蘭花の姿があった。
「うちの勝ちやな♪」
由宇が勝利の決めポーズをつくる。
「蘭花さん、大丈夫ですか?」
ミルフィーユが心配そうに駆け寄る。
「だ、大丈夫よ。たいしたことないから、あんたはあっちに行ってなさい」
蘭花がミルフィーユの助けを借りずに自力でたちあがった。
そして、改めて構えをとる。
「さあ、次は誰が相手なの?」
こみレンジャーで名乗りをあげたのは、すばるだった。
「はいですの、次はすばるが行きますですの!!」
「OK、それじゃあ、いくわよ!!」
蘭花が一気に間合いを詰める。
すばるも一気に前にでた。
そして、二つの影が重なった瞬間だった。
「大影流合気術奥義、流牙旋風投げ、ですの〜!!」
すばるの叫びと共に蘭花が宙を舞った。
ズガン!!
そして、鈍い音とともに地面にたたきつけられた。
「あうう………」
今度はさすがの蘭花もすぐには立てないようだった。
エンジェル隊の仲間もさすがに今の技にビックリしているようだった。
数分後、ゆっくりと蘭花がたちあがった。
「むきーっ!!訓練変更よ!!今から『占い』の訓練よ!!」
さすがに連敗がきいたのかかなりムカついている様子だった。
「でも、なんで占いなんですの?」
すばるが尋ねる。
「バカね、未来予測ができれば事件を未然に防ぐこともできるでしょう」
「でも、それって占いというより、予知能力っていった方がいいんじゃないのかなぁ?」
「うるさーい!!とにかくやるったらやるの!!」
機嫌の悪い蘭花には逆らわない。
その法則にしたがってとりあえず、みんな蘭花の言うことをきくことにした。
「方法は簡単。このサイコロをふって出る数を当てるのよ。的中数の多い方の勝ちよ」
そう言ってサイコロを取り出した。
「それじゃあ、そこの緑の髪の子、あんたが相手よ」
「ふっふっふっ、いよいよこの詠美ちゃん様の登場ね。女王の力、たっぷり見せつけてあげるんだから」
「それじゃあ、いざ勝負!!」
………結果、詠美の圧勝♪
「詠美さん、すごいですのー!!」
「うちも正直ビックリや…」
「ふっ、これは大庭女史の流行感知能力、つまり未来予測が本格的に開花したものだな」
「本当かよ………」
一方、蘭花はショックのあまりに真っ白に燃え尽きていた。
「蘭花〜、生きてるか〜?」
フォルテが呼びかけても、蘭花は無反応だった。
「だめだ、こりゃ。完全に燃え尽きてるね」
「仕方ありませんね。次の訓練に移りましょう」

第三訓練『電子戦訓練(byミント)』
「それではみなさん、よろしくお願いします」
ミントが軽く挨拶をする。
「今の時代、闘いは肉弾戦のほかに電子戦も重要になっています。それで各種ハッキング方法とその対策について教えようと思います」
そこまで話すとミントは、こみレンジャー一同の顔をみわたした。
「この訓練ですけど、ちょっと専門的になりますので皆さんの中からコンピュータに詳しい方のみ選別したいのですがよろしいでしょうか?」
こみレンジャーは顔を見合わせる。
「それじゃあ、大志と詠美だな」
「そうだな、大志は結構そういうの得意そうだし」
「ふみゅ、じゃあ私は?」
「詠美は良いノートパソコンもっとるやないか」
「それだけの理由なのーー!!」
「それじゃあ、お2人は別室で訓練をいたしますね。他のみなさんはとりあえず休憩ということでよろしいですね」
そう言うと、ミントは大志と詠美を連れて別室へと姿をけした。
数時間後……ミントたちが戻ってきた。
「あっ、ミントさん。訓練の方はどうなりました?」
ミルフィーユが尋ねる。
「ええ、それはもう、お2人とも優秀でしたわよ」
そう言いながら大志と詠美の方へと振り返る。
「ふははははは、もはや我輩にハッキングできないサーバーはない!!」
大志が高らかに笑う。
「大志さんは、もうア○○カのN○S○にでも楽にハッキングできますわ」
ミントがにこやかに説明する。
「それはそれでまずいんじゃないのか………」
一同、おいおいという表情だ。
一方の詠美はいうと、大志のはつらつとした表情とは逆に今にも死にそうな表情だった。
「おい、詠美、大丈夫か?」
「詠美にはちょっときつかったんかなぁ?」
和樹と由宇が心配そうに尋ねる。
「ふみゅ、大丈夫よ。この詠美ちゃん様にすでにわからないパスワードはないんだから………」
不気味な笑みで詠美が答えた。
「ちなみにすべてのパスワードおよびIDはサイン・コサイン・タンジェントで求められるんだから……」
そう話す詠美の目の焦点はすでにあってなかった。
「可哀想にな、詠美…」
「ほんまになぁ、詠美の脳にはちとつらすぎたみたいやなぁ…」
そんな詠美をみんな哀れみの目で見るのだった。
「それでは次の訓練にまいりますわ」

第四訓練『調理訓練(byミルフィーユ)』
「ふるって混ぜて、またふるって〜、ふるった次はまた混ぜよ♪」
ミルフィーユは楽しそうにお菓子を作っている。
「ってなんでいきなりお菓子作りやねん!!」
由宇がツッコミをいれた。
「由宇さん、お菓子作りはまごころが大事なんですよ」
「しかも答えになってへんし!!」
由宇がハリセンを取り出す。
それをミントがなだめる。
「まあまあ、落ち着いてください。ほら、疲れた身体には甘いお菓子って言いますでしょう?ミルフィーユさんはきっとそれを教えようとしているんですよ。ねぇ、ミルフィーユさん?」
「はい、そうで〜す♪」
ミルフィーユが元気一杯に答える。
(うそだ、そんなこと考えてなかったって……)
フォルテと蘭花が心の中で呟いた。
「でも、まあそういうことなら、今回はこみパボインの出番だな」
和樹が瑞希の方を振り向く。
「そうだな、マイシスター、こみパボイン」
大志も振り向く。
「だから、こみパボインって言うなーーー!!」
瑞希の叫び声が響く。
それはともかく、ここでみんなティータイム♪

第五訓練『精神的訓練(byヴァニラ)』
「では、お祈りの時間です………」
そう言うと、ヴァニラは神への祈りを開始した。
こみレンジャーとエンジェル隊のほかのメンバーはただ呆然とするのみだった。
「ここまでくると、何の訓練かわからんなぁ…」
「困ったときの神頼みですの?」

そしてその後も『戦闘機訓練』『ミサイル解体』『ルーレット必勝法』『サイコロトーク』などきびしい(?)訓練が続けられた。
「よし、これですべての訓練は終了だ」
フォルテがみんなに告げた。
「みんな、よく頑張った。これであんたたちも立派な軍人だ!!」
「ぱぎゅ〜、すばるは軍人じゃなくて、正義の味方ですの〜!!」
「次にあう時は負けないからね」
「リターンマッチか、いつでもうけてたつでぇ」
「今度また一緒にケーキつくりましょうね」
「その時は、おいしい紅茶も用意しておくね」
「詠美さん、頑張ってくださいね」
「ふみゅ〜、もうアルファベットと数字の羅列は見るのもいや〜!!」
こうして、エンジェル隊とこみレンジャーの合同訓練は幕を閉じた。

合同訓練から数日後…
こみパ運営委員会で事件がおこった。
「大変です、委員会のサーバーが何者かにハッキングされました」
南の説明では、こみパの参加サークルがハッキングによって全て『ネコみみメイドさん』系のサークルになっていたという。
それを聞いたみんなの視線は1人の男へ集中した。
「大志、ひょっとしてお前……」
「何をいう、マイ同士。我輩がそのようなことをするとでも思っているのか」
大志は真剣な表情だった。
「そうか、大志がそんなことするわけないよな」
そして、和樹は再びハッキングを受けたサークルリストへと目をやった。
「んっ?」
「どうしたのだ、マイブラザー?」
「俺のサークルがない……」
「ほんまや、うちのサークルもないで」
「ふみゅ〜ん、詠美ちゃん様も!!」
それを聞いた大志の顔にあせりの色があらわれた。
「そんなバカな、たしかにマイ同士たちのサークルは壁の一等地に配置………」
そこまで口にして大志はハッとして口を閉じた。
しかし、時すでに遅かった。
「やっぱりお前が犯人じゃないかーーーー!!!!」
バッキーーーーン!!!!
大志は空の彼方へと消えていった。
こうして、こみレンジャーの活躍によって再び即売会の平和は守られたのだった。
だが、こみレンジャーの物語はまだ始まったばかりである。
これからも即売会の平和のために戦え、こみレンジャー!!
頑張れ、こみレンジャー!!


………って、このシリーズまだ続くの?
「………神のみぞ知る(byヴァニラ)」