東京某所、世界最大の同人誌即売会「こみっくパーティー」がおこなわれるこの地に彼女たちはやってきた。
「なんなのよ、この行列は!!」
何千人という列を見て驚いている蘭花・フランボワーズ。
「ほんと、すごいね、こりゃ」
同じく行列をみてつぶやいたのが、フォルテ・シュトーレン。
「今はまだ数千人ですけど、情報によると最終的な人数は十万人以上だそうですよ」
冷静に状況を分析しているのが、ミント・ブラマンシュ。
「ふ〜ん、すごいイベントなんですね〜☆」
素直に感心しているのが、ミルフィーユ・桜葉。
「………………」
無表情で黙っているのが、ヴァニラ・H。
以上、エンジェル隊の5人である。
「ところで、今日の任務って何なんですか〜?」
ミルフィーユが能天気な声で質問してきた。
「あんたね〜、任務の内容もわからないで来てたの?」
やれやれ、といった感じで蘭花が答える。
「いい!!私たちは今回…………ヴァニラ、答えてあげて」
蘭花はちょっと引きつった表情でヴァニラに話をふった。
「蘭花さんも任務の内容をわかってないみたいですね」
蘭花を見ながら、ミントが軽くつっこみをいれた。
「そ、そんなことないわよ。ただ、ヴァニラの方がわかりやすく説明できると思ったからよ。わ、私はちゃんと任務の内容は知ってるんだからね」
「はいはい、わかった、わかった。それじゃあヴァニラ、説明よろしく」
フォルテが収拾がつかなくなる前に、みんなをなだめて話を進める。
「はい。わかりました。今回の任務は、復活したサークル「腹白い姉妹」の鎮圧です」
「腹白い姉妹って?」
「かつて、この『こみパ』を支配しようとした悪のサークルです。しかし、伝説のおたく戦士『千堂和樹』に活躍によってその野望は打ち砕かれました」
「へ〜、そうなんだ〜」
ミルフィーユが感心しながら聞き入る。
「ちなみに、これは一ヶ月前の話です」
「一ヶ月前〜!!」
おもわず蘭花が叫んだ。
「それじゃあ、前回のこみパの時に消滅したはずのサークルが、またすぐに復活したってこと?」
「はい」
表情を変えずにヴァニラが答える。
「まあ、オタクの生命力と情熱はすごいですからね」
ミントが、かるくため息をつきながらつぶやいた。
「そんな最近の話なら、今回もそのなんだっけ、伝説のオタクにでも頼めばいいじゃないのよ!!」
「伝説のおたく戦士和樹は、前回の戦いにより精神的に大きな傷を負って現在は静養中です。詳しくはゲームをプレイしてください」
「そんなわけで、今回は私たちに依頼が来たって訳さ。蘭花、わかったかい?」
フォルテが興奮する蘭花をなだめる。
「ところでフォルテさん。どうやって会場に入るんですの?あの行列に並ぶんですか?」
「そうだね、そういうことになるね」
そのフォルテの答えに蘭花がイヤそうな顔をする。
「え〜っ、あの列に並ぶんですか〜!!イヤですよ〜。関係者用の入り口からとか入れないんですか?」
「いや、今回の任務は極秘だからね。スタッフの中にも敵がいるかもしれないから、それは無理だな」
「そ、そんな〜」
蘭花がガックリと肩をおとす。
「仕方ありませんわ。これ以上列が長くなる前に早く並びましょう」
ランファたちは仕方なく列に並ぼうとした。
けど次の瞬間、ミルフィーユが何かを拾ったようだった。
「あ〜っ、ランファさ〜ん。こんなところにサークルチケットが落ちてましたよ〜♪」
「本当かい、ミルフィーユ!!おお、しかもちょうど5枚あるじゃないか」
「やった〜、これで並ばなくてすむのね♪」
「ミルフィーユさん、お手柄ですわ」
こうしてエンジェル隊は、まずは無事に会場内に潜入したのだった。
しかし、会場内に入ったエンジェル隊はまた呆然としてしますのだった。
「外もすごかったけど、中は中でまたすごい数のサークルだねぇ」
「どうします、フォルテさん。カタログにも腹白い姉妹なんで出てませんでしたよ」
「仕方ない、ここは分散して探すしかないね」
くぃ………
「ん?」
フォルテは誰かが袖を引っ張ったような気がした。
「気のせいか……?」
くぃくぃくぃ………
けど、その袖を引っ張られる感触は消えなかった。
「誰だい!!}
フォルテが振り向くと、そこにはおとなしそうな女の子が立っていた。
「何か用かい?」
「………伝説の5つのおたく神器をそろえよ………さすれば、勇者は目覚めるだろう………」
そう言うと女の子は会場の人ごみに消えてしまった。
「伝説のおたく神器……?ミント、なんのことかわからないかい?」
「さあ、わたくしも初めて聞きましたわ」
「……まあ、とにかく今は任務が先だよ。みんな、気をつけるんだよ!!」
「了解!!」
そして、エンジェル隊の『腹白い姉妹』探索が始まったのであった。
フォルテ・シュトーレンの章
「いや、しかし本当にすごい数のサークルだねぇ………」
フォルテは少しぼやきならが歩いていた。
「けど、いろんな本があるもんだね。おっ、あれなんでおもしろそうでないの」
とある本を見つけたフォルテが突然目を輝かせた。
「世界銃大辞典、かい。こりゃいいや。少し見せてもらうよ」
ピピーーーッ!!
フォルテが本を読んでいると、突然後ろから笛の音がした。
振り返ると、そこには一人のスタッフがいた。
そのスタッフはこちらへ近づいてくる。
「何だい?」
フォルテがたずねると、そのスタッフは笑顔で答えた。
「あなた、銃を持ってますね?」
ギクッ!!
フォルテは驚いた。
たしかに銃は持っているが、服の中に隠しているからわからないはずだ。
だが、それを見破るとは………只者じゃない。
「銃の携帯はルールで禁止されてます。ですので、没収です。さあ、出してください」
さて、どうするか……フォルテは考えた。
ここで拒否して騒ぎになるはまずい……しかし、銃を渡して腹白い姉妹との対決の時に丸腰ってのも困る。
フォルテは仕方ないが、そのスタッフに事情を話して見逃してもらうことにした。
「あの………」
フォルテが話し掛けようとした瞬間、そのスタッフのメガネがきらりと光った。
「渡さないつもりですね。なら、スタッフの指示に従わない人は排除します!!」
スタッフはどこから取り出したのか、マシンガンを構えた。
「まじかい!?」
フォルテがとっさに横に飛ぶ。
次の瞬間、マシンガンは火を吹き、さきほどまでフォルテが立っていた場所の床が銃弾で砕けた。
「こりゃ、正気じゃないね」
フォルテは、スタッフに向かってダッシュでつっこんだ。
スタッフが銃を構える。
「遅い!!」
相手が銃を撃つ前に、フォルテはその銃を蹴り上げた。
そして、すかさず相手の延髄にチョップをいれる。
「あっ………」
そして、スタッフは倒れた。
「やれやれ………んっ?」
フォルテが一息つくと、床に何か落ちているのを見つけた。
「なんだい、このトーンは?」
フォルテは落ちていたトーンをまじまじと見つめた。
ただのトーンには無い不思議なオーラを感じる。
「ひょっとして、これが伝説の神器ってやつかい?まっ、とりあえず貰っておくか」
フォルテはそのトーンを懐にしまいこんだ。
フォルテは『スーパートーン』を手にいれた。
「うっ………」
そのとき、後ろで気絶していたスタッフが目をさました。
フォルテは再び戦闘態勢をとろうとしたが、目をさましたスタッフの様子はさっきとは違っていた。
「あら、あらあら、ここはどこかしら?私、何をしていたのかしら?」
フォルテは、そのスタッフの様子を見ることにした。
「確か、委員会の方に届いた差しいれの粉っぽいクッキーを食べて……その後………う〜ん、思い出せないわ」
スタッフはしきりに首をかしげている。
やがてフォルテは、その場を立ち去った。
「薬を使った催眠?どうやら、思っていたよりやっかいなことになりそうだね」
そう呟きながらフォルテの姿は再び人ごみに消えていった。
ミント・ブラマンシュの章
『腹白い姉妹』の探索を開始したミントは、会場のとある場所に来ていた。
その場所とは………
「すいませ〜ん、写真一枚いいですか〜」
「は〜い、どうぞ〜♪」
そう、その場所とはコスプレ会場であった。
「わたくしの推測では、このコスプレ会場が怪しいですわ。じっくりと調査の必要がありますわ」
しかし、ミントの表情はなぜか笑顔だった。
周囲のコスプレを楽しそうに見て回っている。
「フンフフンフフ〜ン♪」
ついには鼻歌まで歌う始末であった。
「みなさん、お上手ですこと。わたくしも着たいですわ。……じゃなくて、調査、調査♪」
そんな楽しそうに会場を回っていたミントだったが、突然何かを見つけたようでピタリと足を止めて動かなくなってしまった。
そしてミントが見つめるその先には、なぜかヘモヘモの着ぐるみが放置されていた。
その着るぐみを見るミントの目は、まるで宝物を見つけた子供のように輝いていた。
「あ、あの着ぐるみ、怪しいですわ。調査してみないといけませんわ」
ミントは冷静を装って着ぐるみに近づいていった。
しかし、ミントの耳飾りは喜んでいる子犬のシッポのようにピコピコと動いている。
「さて、とりあえず調査のために着てみましょうか。本当は嫌ですけど、調査だから仕方ありませんわ」
口では嫌がっているようだが、着替えているミントは非常に嬉しそうだった。
そして、着ぐるみを装着したミントは、まさに幸せ満喫中といった笑顔だった。
「このぬくもり、そしてフィット感。まさに思ったとおり最高ですわ。う〜ん、デリシャ〜ス♪」
そんな幸せ絶好調のミントだったが、その時突然どこからか叫び声が聞こえた。
「今よ!!」
次の瞬間、ミントの頭上からネットが降ってきてミントを捕獲した。
「な、なにごとですの!?」
「にゃははは、見事に罠にひっかかったみたいね〜♪」
現れたのは、とある男性コスをした女のコスプレイヤーだった。
「あなたたちエンジェル隊が会場内に忍び込んできれるのは、すでに腹白い姉妹にはお見通しなんだから♪」
どうやら、そのコスプレイヤーは敵の刺客のようだ。
「この着ぐるみは敵の罠だったんですのね………まさに隙の無い完璧で見事な罠ですわ」
着ぐるみミントがネットの中でもがく。
「さ〜て、それじゃあせっかく着ぐるみを着たんだから、記念に写真とってあげるね〜♪」
そういうとコスプレイヤーはカメラを取り出し、ミントの撮影を開始した。
「や、止めてください!!」
ミントはあせった。万が一この写真がエンジェル隊の他の隊員に見られでもしたら………。
「なんとしても、あのフィルムを奪わないと……」
目が怪しく光ったミントは、懐から小型の端末機を取り出した。
次の瞬間には空中に某格ゲーの映像が映し出された。
「あ〜っ、翔様とガッシュ様だーーーーー!!」
コスプレイヤーは、その映像に見入ってしまった。
その隙にミントはネットから脱出した。
そして、ネットから脱出したミントは、そのコスプレイヤーの頭部にレーザー銃を撃ちこんだ。
「きゃん!!」
コスプレイヤーは悲鳴を上げて倒れた。
「出力を落としましたから、命には別状はありませんわ♪」
ミントはコスプレイヤーからカメラを奪うと、フィルムを取り出しレーザー銃で破壊した。
「これで良し♪………あら、これはなんでしょうか……ひっとして神器?」
ミントは床に落ちていた絵筆を拾った。
ミントは『幻の絵筆』を手に入れた。
「とりあえず貰っておきましょう。あと、これも証拠物件としてもらうことにします」
ミントはちゃっかり着ぐるみも没収してコスプレスペースを後にしたのであった。
蘭花・フランボワーズの章
「もう〜、何でこんなに人がいるわけ〜!!信じられない〜!!}
蘭花はブツブツ文句をいっていた。
「こんなとこ、暑いし、臭いし、臭いし、臭いし、もうやだ〜!!」
そんな蘭花に威勢のいい声が聞こえてきた。
「そこの姉ちゃん、そやそや、そこのチャイナな姉ちゃんや。いい本ありまっせ〜♪」
「いいわよ、別に同人誌に興味ないから」
蘭花は面倒くさそうに断った。
「そんなこと言わんと、ほれ、あんた美少年とか美青年とか好きやろ。その関係の本もぎょうさんあるで〜」
美少年・美青年の単語を聞いて蘭花が動きを止めた。
「そ、そこまで言うなら少しだけ読んであげないこともないけど………」
「そうこなくっちゃ!!」
そう言うと、その威勢のいい姉ちゃんは蘭花に同人誌を渡した。
「どれどれ………へ〜、このキャラ格好いい〜。あっ、こっちも!!これもいい男〜♪」
蘭花は渡された同人誌に熱中してしまったようだった。
「せやろ、いいやろ〜♪」
そう言いながら、先ほどの姉ちゃんが蘭花に背後にまわる。
そして次の瞬間、何かが振りおろされた。
ドカッ!!
しかし蘭花はとっさにそれを交わしていた。
「何するのよ!!」
「ふふふ、やるやないか。あんたエンジェル隊の人やろ。うちの名は猪名川由宇!!腹白い姉妹の幹部や!!」
そして由宇はハリセンをかまえる。
「うちは小細工はつかわへん!!正々堂々と勝負や!!」
「正々堂々っていきなり不意打ちしようとしたじゃない!!」
「やかましい、昔は昔、今は今や!!」
由宇が切りかかってくる。
とっさに蘭花は頭の飾りを取り外した。飾りは柄の部分が伸びてロッドになった。
ガキン!!
ロッドとハリセンがぶつかりあう。
「っていうか、なんで紙のハリセンがそんなに頑丈なわけ!?」
「うっさい、根性でなんとでもなる!!」
ロッドとハリセンの激しい攻防。勝負はまったくの互角だった。
「やるやないか」
「当然でしょ!!」
しかし蘭花はあせっていた。
今は互角だが、相手のパワーでこっちの体力は急激に消耗している。
このままではこっちが不利だ。
「こうなったら、いちかばちか!!」
蘭花が大きくジャンプした。
「必殺、稲妻キーーーーック!!」
蘭花のキックが由宇を狙う。
「甘いで!!」
しかし由宇はそれをかわすと、逆に蘭花にカウンターのハリセンを撃ちこむ。
「うっ!!」
強烈な一撃を受けた蘭花が地面に倒れこむ。
「姉ちゃんも頑張ったけど、これでおしまいや!!」
由宇がとどめのハリセンを振り上げる。
(もうダメ!!)
蘭花がそう思った瞬間であった。由宇の動きが止まった。
ちらりと時計を見ると大声で叫んだ。
「あーっ、もうサークル○×のコピー本配布時間やないか!!今回はうちが担当やったんや!!」
そしてそのまま走り去ってしまった。
その姿をぼーぜんと見つめたまま蘭花は呟いた。
「助かったの?」
蘭花は緊張の糸がきれたのか、そのままへなへなと地面に倒れこんだ。
するとそこに由宇が落としたのか、一本のGペンが落ちていた。
「何だろ、これ?」
とりあえず蘭花は拾っておくことにした。
蘭花は『伝説のGペン』を手にいれた。
「でも、それにしても同人誌ってのけっこうおもしろいかも。集合時間まで少し見てようかな〜♪」
そして蘭花は少女向け同人誌を買いあさるためサークルめぐりを始めたのだった。
ヴァニラ・Hの章
「………………」
ヴァニラは黙々と腹白い姉妹を探していた。
会場の半分も探し終わったころ、ヴァニラは後ろから声がするのに気がついた。
振り向くと一人の女の子がこちらを見てる。
「………………」
ヴァニラは無表情でその女の子を見つめた。
「あ、あの…その、え、えと、だから、その………」
その女の子は非常に緊張しているようだった。
「じ、実は、その、えと、そ、そんなんじゃないんですけど、だから、その…」
「………………」
そんな女の子の様子をやっぱりヴァニラは無表情のまま見つめていた。
「え、えと、………あわわ……だから、その……」
女の子は必死に何かを喋ろうとするが、やはりまとも言葉にならない。
「………………」
そしてヴァニラも、それを無表情で見つめている。
「ああ、あの、え、う、………ご、ごめんなさい!!」
突然あやまったかと思うと、その女の子は猛ダッシュで走り去ってしまった。
そして、その女の子のいた場所にはCDが落ちていた。
ヴァニラは、とりあえずそれを拾った。
ヴァニラは『ノリノリ&癒しCD』を手に入れた。
CDを手に入れたヴァニラは再び何事も無かったかのように探索を開始したのであった。
ミルフィーユ・桜葉の章
「う〜ん、何か道に迷っちゃったみたい」
ミルフィーユは途方にくれていた。
「そうだ、とりあえず誰かに聞いてみようっと♪」
そういうと、ミルフィーユはとあるサークルに走っていった。
「すみませ〜ん、少しお聞きしたいことがあるんですけど〜☆」
ミルフィーユが声をかけると、そのサークルの人はやや面倒くさそうに答えた。
「何?新刊ならとっくに完売しっちゃてるわよ。あとスケブも今日は受けつけてないから」
「え〜と、そうじゃないんですけど」
「じゃあ何の用なのよ。あっ、わかった!!あんた、温泉子パンダのスパイね!!」
「えっ?」
ミルフィーユは訳がわからずキョトンとしていた。
「返事が無いってことはスパイってことね!!超むかむか〜!!この、こみパの女帝詠美ちゃん様に反抗するなんて超なまいき〜!!」
「えっ、えっ?」
「あんた、あんた、あんた!!こうなったら勝負よ!!そして詠美ちゃん様の偉大さを身をもってしるといいわ!!」
「え〜っ!?」
あまりの強引な話の流れにミルフィーユもビックリである。
「勝負の方法はね………ハンデとしてあんたに決めさせてあげる」
「はい、何だかよくわからないですけど、それじゃあ料理勝負でお願いします」
ガクッ!!
詠美が机に顔面からこける。
「あんた!!この会場でどうやって料理勝負するっていうのよ!!」
「ふえ〜ん、怒らないでください〜」
詠美に怒鳴られたミルフィーユが泣きそうになる。
「ちょ、ちょっと怒らないから泣かないでよ。ほら、今度はちゃんとした勝負方法を言ってよ」
「はい、それじゃあジャンケンはどうですか?」
「ジャンケン〜?」
詠美があきれたような顔をする。
「ひょっとして、だめですか〜?」
ミルフィーユがまた目をウルウルさせる。
「ま、まあ、仕方ないわね。それじゃあ、ジャンケンで勝負よ!!」
…………そして、数十分後。
「ふみゅ〜ん、これで366連敗目〜(泣)」
詠美があまりの負けにヘロヘロになっていた。
「なんでなんでなんで、どうして勝てないのよ〜!!」
「私、こうみえても運がいいんです☆」
ミルフィーユが笑顔で答える。
「ふ、ふみゅ〜ん………も、もうダメ〜」
とうとう詠美が力尽きて倒れてしまった。
「あ、大丈夫ですか?しっかりしてください!!」
「悔しいけど今回は負けを見とめてあげるわ……ご褒美に詠美ちゃん様から素敵なプレゼント……ガクッ!!」
倒れた詠美の手には帽子が握り締められていた。
ミルフィーユは『神様の帽子』を手に入れた。
「プレゼントは嬉しいけど、そういえばまだ私の質問に全然答えてもらってませ〜ん!!」
ミルフィーユの叫びが悲しく響いたのであった。
最終章:そして伝説へ…
「どうだい、見つかったかい?」
エンジェル隊の5人は会場内の探索を終えて再び集合していた。
「いいえ、見つかりませんでしたわ」
「いったいどこにあるのよ〜!!」
結局、腹白い姉妹は見つからなかったのだ。
「まいったね……いったいどこにあるんだい」
「ミントさん、ミントさん、そういえば前回はどこにあったんですか?」
「たしか前回は屋上でしたけど………まだ見てませんでしたよね」
「そういえば見てないね。一応、見てみるか」
「前回と同じ場所にいるほど敵もバカとは思えませんけどね」
こうしてエンジェル隊は屋上へと上がっていった。
しかし、屋上には人の気配は無かった。
「誰もいませんね〜」
「やっぱり無駄足でしたわね」
エンジェル隊が諦めて会場内に戻ろうとしたとき、突然人影が現れた。
「まさかここが見つかるとは………エンジェル隊、あなどれませんね」
「………同じ場所にいたよ………」
フォルテ・蘭花・ミントが軽くため息をつく。
「はい、は〜い。あなたが腹白い姉妹の首領さんですか〜?」
ミルフィーユがマイペースに質問をしていた。
「はい、そうです。いくみんって呼んでください♪」
「………いくみん………」
またまた、フォルテ・蘭花・ミントがため息をつく。
「可愛い名前だね〜♪」
ミルフィーユは誉めていた。
「ありがとうございます。でも、せっかくですがあなた達はここで始末しないといけません。出でよ、我が軍団最強コンビ!!」
いくみんの合図とともに二人の人影が現れた。
「毎度どうも〜☆」
「ふん!!」
現れたのは、宅配便の作業着を着た女の人と、やたらごつくてでかい男であった。
「さあ、風見さん&お兄ちゃん!!エンジェル隊をやっつけてください!!」
二人がエンジェル隊に向かって突進してくる。
「そう簡単にやられるもんか!!」
フォルテと蘭花が二人に向かっていく。
しかし次の瞬間、フォルテと蘭花は地面に倒れていた。
「こ、こいつら……強い………」
「わーっ、フォルテさん、蘭花さん、大丈夫ですか〜!!」
ミルフィーユが叫ぶ。
「人の心配より、自分の心配をしたほうがいいですよ」
「うむ!!」
次に二人はミルフィーユにターゲットを絞り突進してくる。
「わわわ〜」
オロオロするミルフィーユに二人が攻撃を仕掛けようとした瞬間であった。
ツルッ!!
二人はなぜか床に落ちていたバナナの皮に滑って転倒、そしてそのまま気絶してしまった。
「ミルフィーユさん、やっぱり極悪な運の強さですわ」
その様子を見たミントが呟く。
「くっ、やりますね。こうなったら私自らが相手をしてあげます!!」
いくみんは懐から妙な機械を取り出してスイッチを押した。
するとエンジェル隊が急に苦しみだしたのだ。
「なんだいこれは!?」
「うぅ〜〜、も、萌え〜〜!?」
「ふふふ、どうです。この機械から発生する電波を浴びると『メイド・猫ミミ・メガネッ娘』など各種属性に萌え萌えになってしまうんです」
「何だって!!」
「そんなの嫌〜!!」
フォルテや蘭花が叫ぶ。
「あっ、でもなんだかおもしろそうかも〜♪」
ミルフィーユだけは、相変わらずのん気であった。
その時である。異常な笑い声が聞こえてきたのであった。
「ふはははははははははははは!!お困りのようだな、マイシスターズ!!」
現れたのはとりあえず只者ではないオーラをまとった男だった。
「誰だい?」
「ふっ、そんなことはどうだっていいではないか。それよりも我輩が助けてやろうか?」
「えっ?」
「お前達は伝説のおたく神器を持っているはずだ。それを使って伝説のおたく戦士を目覚めさせるのだ!!」
「………あんたが誰かは知らないけど、どうして私達を助けようとするんだい?」
フォルテの問いに、その青年は当たり前のように答えた。
「愚問だな……こみパの支配者になるのは我輩だ。そのために邪魔な腹白い姉妹は抹殺あるのみ!!」
「………………」
ちょっと周囲の時間が止まった。
「ま、まあ、理由はともかく助けてくれるんならいっか」
「そうですね」
エンジェル隊は別にこみパの支配者が誰であろうとかまわないのだ。
「はい、これが神器です☆」
「うむ!!」
青年は神器を受け取ると、おもむろに叫んだ。
「伝説のおたく戦士和樹よ!!今こそ目覚めるのだ!!」
そして、次に壁にあったスイッチを押した。
すると屋上の床の一部が開いて、中から一つのベッドが出てきた。
そこには一人の青年が眠っていた。
「目覚めろ、マイ同士和樹!!」
青年は神器を天高く掲げたかとおもうと、それをそのまま地面に捨てて、懐から何かとりだしスイッチをいれた。
『朝、朝だよ〜、朝ご飯食べて学校いくよ〜☆』
それはどうやら録音式の目覚まし時計だった。
「う〜ん、もう朝か〜」
ベッドで寝ていた伝説のおたく戦士和樹が目を覚ます。
「っていうか神器、関係ないじゃないの!!」
蘭花がツッコミを入れる。
「まあ、雰囲気の問題だ」
青年はさらりと受け流す。
そんなやり取りの中、伝説のおたく戦士和樹はベッドから身を起こした。
「良く寝たな〜、…………って、ここどこだよ!!」
「グッモーニン、同士♪」
「大志!!お前、俺が寝てる間に何をしやがったんだ!!」
目覚めた伝説のおたく戦士はどうやら怒っているようだった。
「まあまあ、それよりあれを見てみろ、マイ同士」
そして青年は、いくみんの方を指差した。
「あっ、郁美ちゃん、またこみパを支配しようとしたの?」
「あうぅ……」
いくみんはいたずらの見つかった子供のようにおびえていた。
「こみパはみんなで楽しくやるものだから支配なんかしちゃダメだって、この間言っただろ」
「ごめんなさい、和樹さん………」
「郁美ちゃん、そんなに落ち込まなくてもわかればいいんだよ。それじゃあ、今日は飯でも食べて帰ろっか」
「はい、和樹さん。それとエンジェル隊のみなさん、ご迷惑をおかけしてすみませんでした」
「それでは、さらばだ。マイシスターズ!!」
こうして、エンジェル隊の活躍によって腹白い姉妹の野望は再び打ち砕かれたのだった。
そして、この日のこみパは新たな伝説として永遠に語り継がれたのであった。
完
「………何だか納得できませんわ(byミント)」