『芳賀玲子ミレニアムSS』



(序章)
1999年12月31日、明日はついに2000年になる。
皆、それぞれ色々な場所で大晦日を過ごし、2000年元旦を迎えようとしている。さて、この人たちは2000年を、どのように迎えるのであろうか・・・

(1)

「きゃーぁ!」 ズデーン

「どうした同志瑞希、こんな簡単なところも滑れんのか」

「いたた・・・あんたねっ!私はあんたと違って今日初めてやる人間なのよ!いきなりこんな上級者コースに連れてきて、滑れるわけないでしょう!立てるのがやっとなんだから!うわぁー!」

「情けないぞ同志瑞希。我輩なんか初めからこんなところを平気で滑ったものだ。さぁついてこい!」

「ちょ、ちょっとー大志、待ちなさいよーきゃっ!もうやだやだ!それより、和樹と玲子さんはどこ?」

「同志和樹なら、芳賀玲子と一緒に滑っておるぞ。ほら、あそこだ。」

大志の指を指した方向には和樹と玲子が一緒に綺麗なシュプールを描いていた。

先に和樹、後ろから玲子というふうに、彼らはクロスしながら滑っていた。周りから見るとそれは綺麗な光景だった。

「へぇ、あいつの才能は絵だけじゃなかったんだ。ボードも上手かったなんて知らなかった。」

「我輩が仕込んだからな。あいつは飲み込みが早い。我輩も奴には抜かれないよう必死だ。それだけ奴は上手い。ただ、芳賀玲子があそこまで上手いのは我輩も驚きだ。」

「何か悔しい〜!大志!あたしもあそこまで上手くなりたい。ちょっとコーチしてよ!」

「我輩の指導は厳しいぞ!それと受講料もいただくぞ。」

「厳しいのはいいけど受講料は払わないわよ。ばかばかしい。」

「そうか、ならば一人で雪だるまになって転げ落ちてくるがいい。では我輩も奴らの後をおうことにしよう。下で待っているぞ同志瑞希」

「えっ嘘!?待ってよ大志!分かったからお願い先に行かないで〜!」

「仕方のない奴だ。じゃあ奴には携帯で連絡するとしよう。」

ごそごそと大志は自分の携帯を取り出し、和樹に連絡した。

ぷるるるるるー

すでに先についている和樹は自分の携帯がなっているのに気づき、取り出した。

「はいはい?大志か?どうした?」

「我輩だ!今まだ同志瑞希と上にいる。こいつが我輩にコーチしてくれと頼んでいるので今から我輩は奴につきっきりになる。昼にこのゲレンデの下のレストランで待ち合わせとしよう。それまでおまえは芳賀玲子と一緒にいるといい。」

「げっ、あいつがお前にコーチを?あいつも可哀想に。あいつは俺と違って女だから俺のときとは違ってやさしく指導しろよ。」

「お前は気にせず芳賀玲子と楽しく滑っていろ。せっかくの機会なのだから。」

「ああ、じゃあそうさせてもらうよ。昼にレストランの前だな?じゃあな。」

ピッ

隣にいた玲子が

「ねぇ、大志くん何だって?」

と聞いてきた。

「なんでも、瑞希が大志にコーチしてくれって頼んだらしくて、昼にこの下のレストランで待ち合わせしようとか言ってたよ。それまで玲子ちゃんと一緒に滑ってろだと。」

和樹は説明した。

「一緒にって・・・大志くん私たちに気を使ったのかしら?」

「さあ、どうだろう。あいつにそんな気を使うとも思えないし、本当に瑞希が頼んだのかも。」

「大志くんってボード上手いの?」

「ああ、俺もあいつから教わったからね。おかげで人並みの腕にはなったよ。玲子ちゃんのほうが俺より上手だけどね。」

「そ、そんなことないよ。和樹くんのほうが全然上手いよ。私はまだまだだよ。教えてよ〜♪」

「えっ??俺が教える?そんな俺だって玲子ちゃんに教えて欲しいくらいだよ。」

「じゃあ、もう一度このコースを滑って速かったほうが教えるってどう?」

「俺、遅く滑ろう・・・」

「ずるいよ〜。真剣勝負だよ!じゃあ、負けたらお昼奢りねっ!」

「えー!まじで?絶対に勝つぞ〜。」

「じゃあ行こうよ♪」

「よしっ!行こうか!」

リフトに乗り、終点につき彼らはビンディングをセットしてスタンバイをした。

そして、周りを確認し、タイミングよく玲子から飛び出す。つづいて和樹も飛び出して玲子を追った。

 

(2)

昼になり、和樹たちは大志との約束の場所、レストランに着いた。

朝から滑っていたので彼らはもうお腹がとてもすいていた。

そこにはもう、大志と瑞希が先に着いていて彼らの到着を待っていた。

大志の隣で瑞希はくたくたなのか、雪の上にぺたんと腰を下ろしていた。

「何だ瑞希、へばっているのか?思ったより体力ないんだなお前。」

和樹が笑いながら瑞希に聞いた。すると瑞希は、

「こいつすごいスパルタなのよ〜。私は初心者だからゆっくり丁寧に教えてくれって言ったのに・・・」

「何を言うか同志瑞希。あれが我輩の”ゆっくり丁寧”な教え方だ。同志和樹は文句言わずやっていたのだぞ。」

「お前、俺のときと同じ教え方だったのか?あれはいくら瑞希でも酷だろ?最初に言っただろ。優しく教えてやれと。」

「そんなに甘ったるく教えてどうする!?今日中にはハーフパイプまで出来るようにするのだからな。
と言うわけだから午後もみっちり調教だ。」

「・・・・あたし、別にそこまで出来なくてもいいよ。」

「まぁ、それより飯食おうぜ!俺と玲子ちゃん腹へって・・・中入ろうぜ。」

和樹の一言で4人全員がレストランの中に入り、列に並んで昼食を注文し、席に着いた。

そのとき、玲子が和樹がビールを注文していたのに気づき、和樹に尋ねた。

「昼間っからお酒?よくないなぁ〜」

それを聞いた和樹は、

「お酒呑んで、午後滑ると気持いいんだぜ。風が冷たくて、仮に転んでも麻痺しているからあまり痛くないんだよ。」

「ふ〜ん。じゃあ私も頼もうかな〜。君のおごりだし〜、にゃははー☆」

「おぅ!呑んどけ呑んどけ!気持いいぞ〜・・・ってそうだった!俺が負けたんだ。午後、もう一度勝負しようよ!」

「OK、OK!いくらでも勝負してあげるよ〜。こんどは何を賭けようか〜。」

結局玲子もビールを注文して二人ともお酒を呑んで午後の滑りに備えた。

 

(3)

午後も午前に続き、いい天気だった。

瑞希は大志について午後も特訓、和樹と玲子は二人でまた色々なコースを滑っていた。

和樹と玲子は色々なコースを滑ってきて二人とも大満足・・・・のはずが、玲子が運悪く新雪に突っ込んでしまい、板が抜けなくなってしまったというハプニングが発生した。

「うにゅ〜、抜けないよぉ〜」

玲子が一生懸命脱出しようと試みたが、それでも板と足は抜けなかった。

和樹は最初笑っていたが、玲子が本当に困っているのに気づき、玲子の救助にとりかかった。

「まず、板から足をはずそう。はずせる?」

玲子は和樹の言われたとおりまず板から足をはずそうと試みた。

不幸中の幸いか、そこは新雪から顔を出していたのですんなりとはずせた。

そして、板を抜きにかかったが、雪は思った以上に重かった。

「うにゅ〜、重くて抜けないよ〜。」

「上にあげちゃダメだよ。横から抜いていかないと。」

和樹のアドバイスを聞いて玲子は横から板をはずしてやっと脱出に成功した。

「良かったね。怪我とは・・・ないか新雪だし。」

「いやぁ〜あたし一時はどうなるかと思ったよ。」

玲子は苦笑した。そして玲子は板を履き、二人はまた一緒に滑り始めた。

この事故があったせいなのか、二人は勝負をやめ、楽しく滑っていた。

 

(4)

時間になり、4人は予約をしておいたホテルにチェックインし、夕食を食べた。

大志の話によると、瑞希は運動神経がいいからか、すぐに上達したとのこと。

明日にはみんなと一緒に滑れるような腕前にまでなったらしい。

夕食が終わり、部屋に帰った4人はそこから宴会が始まった。

みんな楽しくお酒を呑み、色々な話をし、こんな馬鹿騒ぎをしながら2000年を迎えようとしていた・・・・・・・が、以外にも大志と瑞希は呑み過ぎたのか、途中で眠ってしまい玲子も寝てしまった。

和樹は部屋を出て、誰もいないエレベーターホールに行き、外の夜景を楽しみながら一人、お酒を呑んでいた。

夜景はとても綺麗で、ゲレンデのランプ、遠くに見える町の明かり、まるで吸い込まれるかのようだった。そのとき、

「ここに・・・いたのね。」

後ろから声がした。和樹はその声のほうに振り返った。そこには玲子が立っていた。

「あんまり長い時間いると風邪引いちゃうよ。」

玲子がちょっと笑いながら言った。

「いやぁ、あまりにも夜景が綺麗だったから、つい・・・」

和樹は外を指差した。玲子がそれを見て、

「ほんとだー。綺麗・・・」

二人とも窓に近寄り、夜景を眺めていた。二人はしばらくの間夜景をずっと見つめていた。

「あのさ・・・今日は本当にありがとう。」

玲子が突然言い出したので和樹はちょっとびくっとした。が、すぐに反応し、

「いやいや、俺も玲子ちゃんとスノボ行きたかったから・・・」

「ううん、それもそうなんだけど、私が新雪に埋もれた時、助けてくれたよね。あのときあなたがいなかったら私、ひとりでパニックになっていたと思う。あなたがいて本当に良かった。私、まだスノボの経験浅いから・・・ありがとう。」

「それは・・・ね、助けなきゃ動けなかっただろ。それにずっと一緒に滑りたかったから・・・」

「あの時のあなたがすごくたくましく見えた。それと同時に・・・かっこよかった。」

玲子が顔を赤くして話した。そして一言、

「和樹くん・・・・好きだよ・・・・」

玲子は更に顔を赤くして下を向いてしまった。それを見た和樹は玲子がとても可愛く見えた。

そして和樹も、

「俺も好きだよ、玲子ちゃん。」

と答え、玲子の顔を上げ二人はキスをした。

その時、午前0時を知らせる時計の鐘が鳴った。2000年になったのだ。

「こんな2000年の迎え方、いいのかな?」

玲子が聞いた。和樹は、

「別にいいんじゃないのかな。俺と玲子ちゃんが良かったら。」

と答えた後、

「明けましておめでとう、玲子ちゃん。」

と言った。玲子も、

「うん、明けましておめでとう、和樹くん。」

と答え二人はまたキスをした。

こうして彼らは2000年をこういう形で迎えたのである・・・・         (Fin)

 

━筆者あとがき━
実はこれが私のSS処女作です。(笑
まとまりのないSSで・・・これからもっと勉強させていただきます。
今回はこのような企画をしてくださいました、CGCさん、神倉碧海さんに感謝しています。
本当にありがとうございました!